測地学会誌
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山岳傾斜地の精密水準測量における高度依存誤差の=検出
田中 穣柿沼 清一小菅 俊宏中野 博美
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1984 年 30 巻 2 号 p. 75-86

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抄録

 わか国では,明治以来精一水準標尺は外国製品で占められ,実用に供するほどの製品は製作されたことはなかった.今回,従来のものより10倍以上膨脹係数の小さな,0.55×10-6/。Cおよび-1×10-7/。Cの,スーパーインパールおよび=.ユースーパーイソバールバンド製の精密水準標尺をはじめて試作した.バンド部の目盛刻印精度は±15μm/3mである.また屈折率補正用の温度計も試作した. これらを用いて,伊東付近で夏冬の2回にわたる野外試験観測を実施し,ほぼ同時期に実施した従来の作業規程に基づく観測の成果と比較した.その結果,水準測量に伴う高度依存誤差が,この路線でこの時期に使われた標尺については,4rnm/100mであることが検出された. 一方,高度依存誤差と思われる現象を検測集録から選び出し統計量として求めたところ最近の1974年以降においても,6.7mm/100mであることも分かった.したがって,地殻上下変動検出のためには,標尺バンド全体として膨脹係数が小さく,かつ尺常数の明らかな標尺を使い,高度依存誤差を±1mm/100以下におさえる必要がある.

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