日本咀嚼学会雑誌
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咀嚼のインスリン分泌に及ぼす影響 (第2報)
松田 秀人橋本 和佳関 哲哉滝口 俊男山本 司将杉山 茂竹市 卓郎伊藤 裕栗崎 吉博斉藤 滋高田 和夫長嶋 正實
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2002 年 11 巻 2 号 p. 147-151

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抄録

食欲の調節機構として, 満腹中枢および摂食中枢が, 食行動調節を司っている. 咀嚼が中枢に及ぼす影響についての研究は少なく, 臨床研究は特に少ない. 摂食抑制物質のうちヒスタミンの分泌は, 咀嚼すなわち噛む刺激によることが, 遺伝性肥満動物Zuckerラット実験により判明した. また前報で, 咀嚼の中枢への作用が示唆された. このような背景から, 食事前にチューインガムを噛むことにより, 咀嚼がインスリン分泌に及ぼす影響について検討した.
19歳から25歳までの健康な女子19名を対象に, 糖入チューインガムの15分間咀嚼の後, 75gブドウ糖負荷試験を行い, ガム咀嚼の前, 咀嚼後3分, 6分, 9分, 15分と, それに引き続いて75gブドウ糖負荷後の15分, 30分, 60分, 120分後の計9回, 肘静脈より採血して, 血糖, インスリンを測定した. さらに, 糖入ガムと同量の糖液を摂取した場合で同様の測定を行った.
その結果, 糖液に比べて糖入チューインガムを咀嚼した時のほうが, 75gブドウ糖負荷後の30分値において, インスリン分泌量が少なかった. また, 糖液に比べて糖入ガムを咀嚼した時のほうが, 総インスリン分泌量が少なかった. このことから, 咀嚼による中枢への関与が示唆され, 咀嚼が糖代謝の亢進に寄与していると結論できる. また, ガム咀嚼により, 低インスリンダイエットと同様の効果が期待できる.

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