日本咀嚼学会雑誌
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咀嚼力と握力および食習慣との関係
幼児から高齢者までの調査から
吉野 陽子神山 麻子張替 信之鈴木 正成
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2005 年 15 巻 1 号 p. 2-10

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抄録

咀嚼力が基礎体力, ならびに食習慣とどのような関係があるかを調べることを目的とした.調査対象者は女性1, 337名, 男性767名の計2, 104名であり, 年齢は3~97歳であった.咀嚼力は, チューインガム法による糖溶出量を指標とした.咀嚼力と基礎体力の指標の一つである握力との関連を調べた.また, 男性21名, 女性36名の計57名による3日間の食物摂取状況調査により, 咀嚼力と食習慣の関連を調べた.
咀嚼力と握力との間では有意な相関性が認められた (男性: r=0.492, p<0 .001, 女性: r=0.481, p<0.001).また, 咀嚼力と運動習慣の有無との関係を調べたところ, 運動習慣のある人はない人に比べて有意に咀嚼力が高かった (男性: p=0.05, 女性: p=0 .001).
食習慣との関係では, 3日間の食物摂取状況調査から朝食, 昼食, 夕食の各々における摂取食品数と1日の総食品数を調べた.また, 1日に摂取した食品中に占める硬い食品の摂取割合を調べ, これらが咀嚼力とどのように関係しているかを検討した.その結果, 朝食の食品数と咀嚼力の間には弱いながらも相関が認められた (r=0.364, p<0.05) が, 昼食と夕食との間には関連性がみられなかった。また, 硬い食品の摂取割合と咀嚼力の間には関連性がみられなかった.
これらの結果から, 咀嚼力は食習慣よりも基礎体力や運動習慣のほうが相関性は高いことがわかった.したがって, 今後は咀嚼力の向上や改善には運動指導をも取り入れる必要性があるのではないかと考えられる.また, これまでに硬い食品を摂取することが強調されてきたが, 今回の調査により朝食の食品数と正の相関性が認められたことから, こうした要素も重要であることが示唆された.

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