抄録
米飯咀嚼時の食塊物性変化を調べるために, 咀嚼の中間期 (M), 第1嚥下誘発時点 (L), および第1嚥下までに要した咀嚼回数の20%余計に咀嚼した時点 (+20%) の米飯食塊をそれぞれ口腔内から回収してその物性を解析した.8名の成人被験者に6gの米飯試料を咀嚼させた.米飯食塊物性の測定はtexture profile analysisに従って行った.食塊の硬さは, 咀嚼の中間期 (M) から嚥下直前 (L) になると有意 (p<0.05) な減少を示したことから, 食塊の硬さの減少は嚥下誘発にとっての必要条件であることが考えられる.食塊の付着性は咀嚼の進行に従い有意 (p<0.01) な減少を示した.これに対し, 凝集性は有意な変化を示さなかった.これらの結果から, 米飯食塊の付着性が嚥下閾値まで減少することで嚥下が誘発される可能性が示唆された.