日本咀嚼学会雑誌
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咀嚼のインスリン分泌に及ぼす影響 (第3報)
松田 秀人橋本 和佳百合 草誠高田 和夫
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2006 年 16 巻 2 号 p. 48-54

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抄録

食欲の調節機構として, 満腹中枢および摂食中枢が, 食行動調節を司っている.摂食抑制物質のうちヒスタミンの分泌は, 咀嚼すなわち噛む刺激によることが, 遺伝性肥満動物Zuckerラット実験により判明した.また前報で, 咀嚼の中枢への作用が示唆された.このような背景から, 食事前にチューインガムを噛むことにより, 咀嚼がインスリン分泌に及ぼす影響について検討した.
健康な女子19名を対象に, 糖入りガムの15分間咀嚼後糖負荷試験を行い, 空腹時, 糖負荷後の15, 30, 60, 120分の計5回, 血糖と血漿インスリンを測定した.ガムベースを15分間咀嚼する場合とガムを咀嚼しない場合も同様の測定を行い解析した.
その結果, コントロール群に比べて糖入りガムを咀嚼した場合に血糖が迅速に上昇し下降も速かった.血漿インスリン値も同様の結果が得られた.また, 総インスリン分泌量は有意差が認められなかった.一方, 糖入りガム咀嚼群とガムベース咀嚼群間には有意差が認められなかった.このことから, 咀嚼による中枢への関与が示唆され, 咀嚼が糖代謝の亢進に寄与していることが考えられた.

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