日本咀嚼学会雑誌
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口どけ感のあるビスケットの咀嚼中の物性特性
宅見 央子中村 弘康福田 真一水木 雄亮住野 広明白石 浩荘米谷 俊森戸 光彦塩澤 光一
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2008 年 18 巻 2 号 p. 112-121

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抄録

本研究の目的は, 一般のクリームサンドビスケット (以下, Biとする) と, 口どけ感の高いクリームサンドビスケット (以下, PBiとする) の咀嚼中の食塊物性の変化や, 嚥下直前の食塊物性の特性を比較することである.10名の健常成人 (平均年齢28.1±13.5歳) にBiおよびPBiを嚥下まで咀嚼させ, 咀嚼開始から5回咀嚼した時点, 被験者ごとの咀嚼中間点および嚥下直前まで咀嚼した時点で口腔から食塊を回収し, 食塊物性をtexturepro丘1eanalysisにより計測した.PBiの咀嚼回数はBiに比べて有意に少ない値を示した.食塊の硬さは咀嚼の進行に従い両者ともに有意に減少したが, 嚥下直前の食塊の硬さはBiのほうがPBiに比べて有意に大きな値を示した.Bi食塊の付着性は咀嚼の進行に伴い増加し, 嚥下直前で最大値を示したのに対し, PBi食塊の付着性は咀嚼が進行しても有意な増加は認められなかった.嚥下直前のPBi食塊の付着性は, PBi食塊の付着性よりも有意に低かった.また, Bi食塊の凝集性は咀嚼開始期から嚥下直前まで有意に増加したのに対し, PBiの凝集性は中間期から嚥下直前にかけて著しく増加し, 嚥下直前ではPBi食塊の凝集性は, Bi食塊の凝集性より有意に高かった.本研究の結果から, PBiは咀嚼が容易で, 口中での付着が少ないので, 高齢者や障害者などの咀嚼機能低下者に適した物性であることが示唆された.

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