ソシオロジ
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論文
教育と福祉のせめぎあい
――就学義務化に抵抗する福祉の論理に着目して――
高田 俊輔
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2021 年 66 巻 2 号 p. 23-41

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抄録

本稿の目的は、非行少年を対象として福祉的な「育てなおし」支援を行ってきた教護院における就学義務化の動向に着目し、いかなる議論の中で教護院入所児が教育対象として公教育に包摂されてきたかを明らかにすることである。そこで本稿は、教護院関係者を中心に編まれた『教護』、『非行問題』誌から公教育導入に関する議論を分析した。そこから得られた知見は以下の通りである。 教護院での公教育導入を巡る論争は、教護院内で行われた学科指導を不良性の除去を目的として行うか否かについて議論がなされていた。一方で、賛否両者ともに教護院の実践を「真の教育」として規定し、教護院が学校教育のアンチテーゼとして存在するべきという「教護院の独自性」を共有していたことが明らかになった。 また、教護院関係者たちの間で「教護院の近代化」が議論された際には、根強く存在し続けた教護院の独自性が参照され続けることによって公教育導入に関する議論へと進展することは阻まれた。一九八〇年代になり、高校進学を希望する保護者や児童相談所職員の不信感といった教護院外部からの批判が教護院の独自性を揺るがし、次第に教護の中にも公教育導入へと志向していく姿がみられるようになる。その一方で、伝統的な教護観は公教育導入後も廃れることなく存在しており、教育と福祉の連携を阻んでいく可能性が示唆された。

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