ソシオロジ
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最新号
通巻 188
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
論文
  • ――賃金規定要因は分位点により異なるのか――
    大久保 将貴
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 61 巻 3 号 p. 3-22
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、介護保険サービスにおける介護労働者の賃金規定要因を記述することである。介護保険創設以降、介護労働者の離職率の高さの原因として、低賃金が挙げられて久しいが、介護労働者の賃金規定要因については不明な点が多い。介護労働者の賃金を分析した先行研究の全ては、分布の中心である平均値を予測するものであった。しかしながら、平均値を予測する通常の回帰分析では、観測された異常値に影響を受けやすく、分位点ごとに異なる規定要因を考慮できない。本稿では、これらの問題に対処するため、分位点回帰を採用して賃金規定要因の分析を行った。分位点回帰モデルを採用するのは、分析者が任意に設定した賃金分布の分位点について、外れ値の影響を回避しながら賃金分布全体の変化を記述できるためである。在宅支援サービスが中心である訪問介護員と、施設サービスが中心である介護職員それぞれについて分析を行った結果、賃金の規定要因は分位点ごとに大きく異なるという先行研究では言及のなかった新たな知見を得た。すなわち、低賃金グループと高賃金グループでは賃金規定要因が異なり、とりわけ、男性/女性、正規/非正規、介護福祉士保有/非保有者間の賃金格差が大きいという知見である。賃金分布の記述から、男女間賃金格差や正規/非正規間賃金格差の是正は、介護労働市場においても喫緊の課題であることが分かる。さらに、分析結果からは、事業所レベルで対応できることとして、介護労働者に対する資格取得の積極的支援等が有効であると考えられる。

  • ――非正規雇用から正規雇用への転職のパネルデータ分析――
    福井 康貴
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 61 巻 3 号 p. 23-39
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    本稿では、労働政策研究・研修機構が二〇一三年に実施した「職業キャリアと働き方に関するアンケート」の職歴データを用いたパネルデータ分析によって、非正規雇用から正規雇用への転職に対する入職経路の効果を明らかにする。 非正規雇用と正規雇用の間の移動障壁に関して国内外で研究が蓄積されつつあるが、移動を媒介する入職経路に着目した研究はきわめて少ない。転職プロセスという視角を導入することで、外部労働市場を通じた正規雇用化の様態により迫ることができる。そこで正規雇用に転職しやすい入職経路を検討した。また、入職経路と累積的不利の関係を探るため、初職の時点で確定した不利な求職者属性(ジェンダー、学歴、初職非正規)によって、入職経路の効果が左右されるのかを検討した。同類性や求職意欲に起因するバイアスに対処するため、固定効果モデルとハイブリッドモデルを用いて分析した。 分析の結果、直接応募とくらべて、友人・知人とハローワークは、正規雇用への転職に対して正の効果をもつことがわかった。この結果は、日本の労働市場でも社会的ネットワークの地位達成効果が認められる余地があることや、ハローワークが非正規/正規間の移動障壁をのりこえるために機能していることを示唆している。また、求職者属性と入職経路の交互作用を検討した結果、第一に、友人・知人の効果は求職者属性の違いに左右されないことがわかった。第二に、ハローワークは、求職者の学歴の低さに対して脆弱な側面があるものの、初職非正規の正規雇用化に役立っていることが明らかになった。

  • ――一九八〇年代のアニメ産業の構造的条件に着目して――
    永田 大輔
    2017 年 61 巻 3 号 p. 41-58
    発行日: 2017/02/01
    公開日: 2020/06/27
    ジャーナル フリー

    本稿は、オタク文化を社会学的に考察するために、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の使用実践に着目する。中でも一九八〇年代のOVAの言説的な特徴を詳らかにするために、OVAが“第三のメディア”とアニメファンの間で呼ばれていたことに着目する。 言説を検討する際に、二つの構造的な条件が重要である。一つ目は一九八〇年代中盤のビデオの急速な普及であり、二つ目はアニメーター数が、作品数が増加し質の向上が求められる中で、増加していなかった点である。そうした条件を元に、OVAというメディアをめぐる言説を検討する。 まず第三のメディアの言葉の含意を考えるために、第一のメディア(テレビアニメ)と第二のメディア(劇場版アニメ)の移行関係に着目する。その移行は一九七〇年代後半頃に起こった。テレビアニメは子供むけのものとされてきたが、一九七〇年代後半に子供だけではないファンが発見される。ファンの存在を背景とし、アニメ制作者の側も作家性を発揮することを求めるようになる。しかし、当時のテレビアニメは作家性を発揮するには制約が多かった。そこで注目されるのが劇場版アニメであった。しかし、こうした移行の段階で「作家性の発揮」と「万人に受容されること」の競合関係が存在し、両者の議論の制約としてクリエーターの人数が存在した。 本稿では、OVAが上記の論点を引き継いで語られた媒体であることに着目する。その中で制作者人口が限られた中での「商業の論理」と「作品の論理」のせめぎあいを編集者・消費者・制作者がそれぞれどのように意味づけていくのかという点からその歴史を検討し、様々なアクターの論理のせめぎあいのダイナミズムの中での歴史性を検討する。

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