ヨーロッパ先進国では,ケアの市場化の中でケアへの現金支払いの導入が進み,ケアワークの政策的な規制のあり方にも影響している。他方,日本と韓国は介護保険制度(韓国は老人長期療養保険制度)のもとでケアの市場化を進めたが,保険給付としての現金給付は本格化していない。また,両国には間接的な家族介護労働への支払いの仕組みはあるが,その実績は大きく異なる。以上をふまえ,本稿は,日本と韓国の介護保険制度における家族介護労働への支払いについて,それをケアへの支払いの類型と制度展開に関する研究の流れに位置付けた上で,支払いの施策概要を示す。また,間接的な支払いの実績が大きい韓国に絞り,実績推移とそれに対する政策認識に関する調査結果を提示分析する。最後に,日韓の状況を,ケアの市場化に伴うケアワークの規制の観点から,特にインフォーマルなケアワークとケアワーク市場との関連付けの政策的相違に着目して考察する。