社会政策
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最新号
社会政策 第8巻第2号(通巻第24号)
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巻頭言
小特集1 欧州の就労支援と所得保障:自己決定への模索
  • 高田 一夫
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 5-7
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
  • 山本 麻由美
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 8-19
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     スウェーデンでは,1990年代以降に経済政策を転換したため,スウェーデンモデルが変化したと指摘されている。その結果,失業の状況をみると,1990年代以降,若者の有期雇用の増加による多数の短期的な失業と,それ以外の障害者,移民,低学歴者,中高年に集中している長期的な失業に二極化していた。同時期に社会保障制度では貧困リスクや受給者増の変化を受け止めつつ,それぞれの給付で受給者を労働市場に押し出す方向の変更がなされた。結果として,公的扶助制度が最後の砦として失業者の生活を支えている。スウェーデンの社会保障制度は,その創設期には公的扶助の対象に失業者を含まず雇用政策で対応する方針をとっていたが,公的扶助制度における82年の法改正と実際の運用状況から判断して,社会保障制度の体系においてもスウェーデンモデルが変化したということができる。

  • 小澤 裕香
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 20-33
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿は,就労促進的方向性がますます強められているフランスの最低所得保障(RSA)について,法制度上からみえる就労促進的な方向性の具体的内容,および法制度が実現するところの実際の支援の現場で取られている運用体制の検討という側面から検討することによって,RSAがもたらしたものについて検討した。 RSAは手当の面からみればワーキングプアへの対象拡大という側面があるものの,漏給が指摘されるなど,手当の権利の後退がみられることを指摘した。また,運用体制からみると労働行政と福祉行政との連携強化によって就労への経路を作る動きが観察された。RSA受給者は概して労働だけでは生活できないような就労についている場合が多く,RSAにみられる就労指向型への社会扶助の変化は,労働市場に対して低水準の雇用創出を正当化する手段を与えることになったと指摘した。

  • 森 周子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 34-45
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,ドイツにおける長期失業者とワーキングプアに対する生活保障制度である「求職者基礎保障」制度から提供される所得保障,就労支援,生活支援について,現状,課題,改善の方向性を考察した。まず,所得保障の面では,失業手当Ⅱによって求職者の最低生活を速やかに継ぎ目なく保障しうるという利点が存在する反面,その金額の低さが問題視されていると指摘した。次に,財政上の理由などから失業手当Ⅱの大幅引上げが困難とされる中で,それを補って余りある就労支援・生活支援が必要であるとし,就労支援の面では,個別相談員の質の向上と人員の拡充,生活支援の面では自治体再就労給付の必須給付化が目指されるべきであると述べた。 最後に,求職者基礎保障制度と類似する求職者支援制度と生活困窮者自立支援制度を有する日本への示唆として,恒久的な所得保障の導入の必要性と,就労支援と生活支援に関する任意事業の必須事業化の必要性とを挙げた。

小特集2■子育て支援労働と女性のエンパワメント
  • 相馬 直子, 松木 洋人, 井上 清美, 橋本 りえ
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 46-49
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
  • 相馬 直子, 堀 聡子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 50-67
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     子育て支援労働(子育て支援というケアワーク)に携わることは,女性の社会的・経済的・政策的エンパワメントにどう機能するのか。社会的・経済的・政策的エンパワメント効果が高い支援者と低い支援者の特徴は何であり,その規定要因は何なのか。本研究は,子育て支援労働をつうじた女性の主体化をエンパワメントの視点から考察する。 生協総研調査をもとに分析した結果,⑴社会的エンパワメントにはミッションや組織のモチベーションが,⑵経済的エンパワメントには,経済的報酬額自体や報酬と活動とが見合っているかのバランス感が,⑶政策的エンパワメントにはイノベーション志向の認識(既存の制度にはない支援をする,地域や社会を変える)が,有意な規定要因であった。また,常に新しい技術・技能・知識の習得が必要と認識していると全エンパワメント効果が高まる。 子育て支援の多機能化が進む中,各エンパワメント効果の差のある主体間での相互連携が鍵となる。また,全エンパワメント効果が高い「主軸の子育て支援者」の低賃金から早急に解決すべきである。

  • 近本 聡子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 68-80
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     日本における地域子育て支援拠点制度(事業)策定の発端となった地域の人々(子育て支援者)の活動は2000年前後から各地に自発的(草の根の市民活動)にみられるようになり,2000年施行のNPO法制定後は,行政との連携をしながら地域の子育て支援を現場で実現し推進する団体が急速に設立された。筆者たちの研究プロジェクトでは,これらの非営利・協同組織(サードセクター)で働く「子育て支援労働」とそれに携わる子育て支援者についての実態調査を2013年に実施し,どのような人々が地域で子育て支援をするために集まり,どのような働き方をしているのかを明らかにしようと全国で43のひろば事業(当時)の拠点運営団体(9割以上がサードセクター)を対象として質問紙調査を行った。これと並行して団体の組織概要についての聞き取り調査を実施し,人・モノ・お金の動きを表す資料を収集した。2012年における「ひろば型」事業の拠点数は全国で2026か所である⑴。 この論考では,子ども子育て支援新制度の発足前夜の子育て支援者,子育て支援労働の実態を紹介し,保育士資格などをもちながら家族内のアンペイドワーク(多くは自分の子育て)に特化していた女性たち(調査でも95%が女性)が,地域子育て支援を通して,地域の資源を形成し,経済的,社会的エンパワメントがなされている状況をみる。

  • 尾曲 美香
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 81-91
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,子育て支援者を対象に実施した意識調査・労働時間調査の結果をもとに,子育て支援者の経済的報酬,労働時間,職務内容の実態を明らかにすることである。子育て支援への期待が継続的に高まる一方で,子育て支援者の職務内容やそれに対する経済的報酬が妥当であるかどうかという点については,充分に検討されてきたとは言い難い。とくに近年の子育て支援の多機能化が子育て支援者の職務範囲や負担にどのように影響を与えているかを明らかにすることが求められる。 本稿の分析の結果,子育て支援労働の特徴として,以下の実態が明らかになった。①自分の得ている経済的報酬を妥当だと感じていない子育て支援者が半数近くに上る,②労働時間の長い「現場」での職務の払われ率は高く,その一方,労働時間の短い管理ワーク等の周縁的な職務の払われ率が低い,③払われ率の低い職務に常勤スタッフが従事しやすい,という傾向がみられた。今後は,こうした周縁的な職務を含めた子育て支援労働総体への経済的保障を考えていく必要があるだろう。

小特集3■生活困窮者支援策についての日韓比較研究
  • 戸田 典樹
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 92-93
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
  • 許 賢淑
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     2000年度基礎生活保障法が施行されて勤労貧困層の脱貧困を支援するために自活事業も導入された。自活事業は過去10年間ある程度の成果もあったが,自活事業に参加する受給者の経済的自立だけを目標にしてきたため就業成果と脱受給率が低調しているという非難を避けられなかった。 こういった問題意識から既存の自活事業から脱皮した新しい類型の自活事業を模索するようになり成果管理型自活事業である希望リボーン事業が導入されるようになった。 2009〜2012年までモデル事業として希望リボーン事業が導入後に既存の自活事業を含めた全体的な脱受給率も少しずつ上昇する成果があった。希望リボーン事業は既存の自活事業で見られなかった成果契約方式の導入と共に1:1で個人に合わせたケースマネジメントを行い,資産形成支援事業(希望育て通帳)と連携して積極的勤労誘引政策を試行して勤労動機を与えた。 希望リボーン事業の示唆点は勤労貧困層に対する就業支援の際に受給者の経済的自立だけを目標にせず,彼らが持っている複合的な問題を除去し自立できるように支援の目標を置くことである。希望リボーン事業の意義は受給者の経済的∙社会的自立において効果的な政策方向を模索することにある。

  • 權 順浩
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 102-113
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,中間的就労がどのように展開し,変遷してきたのか,政策動向を明らかにすることである。政策動向は,①中間的就労の対象,②支援プログラム,③伝達体系の3点に着目して検討を行った。 韓国における中間的就労は,2000年に基礎法の施行とともに制度化・体系化された。その後,展開した政策の特徴は,①支援対象を基礎法受給者だけではなく,次上位階層や就労困窮者まで拡大したこと,②一般労働市場への就労を促すため,さらに成果主義を中心とした個別支援や就労インセンティブ等を強化する一方,社会適応プログラム等,就労困窮者に必要な福祉的支援を縮小する傾向がみられていること,③伝達体系の役割や機能を明確化・体系化する一方,保健福祉部の役割よりも雇用労働部の役割を次第に大きくしている傾向があること,の3点である。こうした特徴から,韓国では,社会福祉的な中間的就労が狭めていると考えられる。

  • 田中 聡子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 114-125
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,世帯更生貸付金制度が生活保護行政に果たした役割について明らかにすることである。1950年代後半,生活保護受給者の増加とその周辺の大量の低所得層の増加が生活保護行政の転換に影響を与えたと考える。そこで,生活保護の第一次適正化と世帯更生資金貸付制度を中心とした低所得層対策の関係性を考察する。日本の生活保護行政は,低所得層対策と関連しながら引締め策を展開してきたと考える。その過程は,ワーキングプアを排除してきた変遷でもある。この課題を解くことによって今日の生活困窮者に対する自立支援策の課題に示唆を与えたい。

  • 大友 芳恵
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 126-134
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     生活困窮者自立支援法における「中間的就労」の位置づけは,雇用型・非雇用型の就労の形式を示してはいるが,現に生活困窮している人の困窮からの脱却を十分に支えるものとなってはいない。 現行の生活困窮者自立支援法における中間的就労の位置づけは就労にのみ着目したものとなっており,最低生活を保障した就労支援の視点が欠落してしまった。これまで,福祉的な生活保障と就労をミックスさせた,いわゆる「半福祉・半就労」を中間的就労とした捉え方が変化してしまったのである。 この課題を再考するために「釧路モデル」の政策的意義を再確認し,様々な困難を抱えている人々の自立支援の一つである「中間的就労」の生活保障には最低生活のあり方を議論することが喫緊の課題である。

  • 戸田 典樹
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 135-147
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     保護を受けながら生きがいや社会参加のために一般就労の場で働く中間的就労という働き方が生活保護自立支援プログラム「釧路モデル」と呼ばれ注目を浴びた。これは社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」報告書(2004)によって提起された就労自立に加え日常生活自立や社会生活自立をも生活保護制度に導入するという新たな自立支援を目指す現場での実践だった。しかしながら保護受給者が2011年には200万人を超え,中間的就労に対しての見直しが図られることになる。生活保護基準の見直しと生活保護法「改正」(2013)とともに,生活困窮者自立支援法(2015)が制定され,中間的就労が生活保護受給者以外のボーダーライン層を対象とした「職業訓練事業」として位置づけられ,名称を変えるという法整備が行われた。この見直しは,稼働世代に対する有期保護制度の導入を提起した全国知事会・全国市長会の「新たなセーフティネットの提案」(2006)をもとに整備されたものである。また,韓国においても2015年より保健福祉部が主管していた「希望リボーンプロジェクト(Re―born Project)」事業が雇用労働部の「就業成功パッケージ」に統合されるといった見直しが実施された。これら両国の見直しは厳しい市場原理主義,グローバリゼーションのもとで進むワークフェア政策を背景にして実施されている。本稿では,日韓両国の自立支援の見直しについて比較検討することにより,これまでの自立支援策の評価を行い,今後の課題を明らかにしたいと考えている。

投稿論文
  • 三家本 里実
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 2 号 p. 148-160
    発行日: 2016/10/30
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,日本のソフトウェア開発の中・下流工程におけるIT労働者の自律性の性質を考察することにある。ここでの自律性とは,開発プロセスの決定におけるそれを対象としている。 ソフトウェア開発においては,担当する工程や生産する製品によって,IT労働者に求められる技能は大きく異なり,それゆえ,労働者が有する自律性の性質も異なる。 したがって,本稿は,自律性の実質的差異を明確にするために,中・下流工程を担う労働者はどれほど自律性を有するのか,また,そこで発揮される自律性とは,どのような性質をもつのか,を明らかにした。 一般的には,下流工程へと進むほど,開発プロセスに関する決定権は制限されると考えられるが,実際には,労働者自身が開発プロセスを決定していた。ただし,そこでの自律性には,技能の保有の有無によって,「形式的」,あるいは「実質的」といった2つの側面が観察された。

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