本研究は、有配偶女性のライフコースにおける就業意欲と勤続年数の延長を背景に、キャリアパターンに影響を与える要因を検証した。分析結果は、30代が離職率の高さを示す一方、出産・子育て等の家庭事情が終了した40代以降は、非正社員として前職を継続する傾向がある。また、高学歴女性は就業継続や転職の傾向が低く、子持ちは離職しやすく転職が困難である。夫の高収入は家庭基盤を安定させ、妻の継続就業や非正社員への転職を促す。さらに、雇用保険加入は正社員への転職確率を3.5倍に上昇させ、企業内教育訓練であるOJTを受けた女性は、転職する確率が1.7倍高く、非正社員への転職確率が2.7倍に達することが明らかとなった。加えて、学習行動の中には学校に通うことは長期的キャリア形成に貢献する一方、読書やインターネット調査は実務スキル習得と転職準備を支援する。これらの結果は、女性の教育訓練などキャリア支援策の充実が必要であることを示唆する。
中国では高齢化の進行に対応して、2016年より介護保険パイロット事業が開始され、現在では29地域へと拡大している。本稿は、制度施行、介護保険業務の遂行、サービスの質評価の3つの面から29地域の介護サービスの質管理システムの運用体制と民間委託の特徴を分析した。介護保険業務が民間保険会社に委託され、介護サービスの質評価がサービス事業者に委ねられているなか、介護サービスの質を評価するための具体的な基準および実施枠組みが整備されていない。こうした状況を踏まえ、本稿では代表事例として「蘇州市モデル」の介護保険制度を構築・施行している蘇州市を取り上げ、介護サービスの質をめぐる課題とその解決策を検討した。その結果から、介護サービスの質を確保するためには、制度施行主体による介護サービスの評価基準の明文化に加え、中立的立場にある第三者機関による評価体制の構築と運用が必要であるという2つのインプリケーションを得た。
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