社会政策
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巻頭言
特集■社会的投資戦略と教育
  • 居神 浩
    2020 年 12 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     今回の共通論題の目的は「日本社会において教育が担ってきた機能について,社会的投資戦略の視点から検討する」であるが,それにあたって本報告では,日本における社会的投資戦略研究の動向を概観したうえで,社会政策研究における教育政策の分析枠組みを提示した。それは端的に言えば,社会的必要の充足を目的とした政策論の提示である。政策論は基本的に「資源論」として,資源配分の効率性と平等性という観点からエビデンスを提示しなければならない。そしてそのエビデンスをもとにして社会的必要の充足に関する理念やビジョンをめぐる「精神論」が展開され,そこからより良い制度への改革を目指す「制度論」が導かれる。

  • 森 直人
    2020 年 12 巻 1 号 p. 12-26
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,19世紀末の日本における学校を基軸とした教育システムの確立から,貧困や社会的排除に抗する政策とも連動して生じつつある現在の公教育再編の動向に至るまでの歴史的展開について,教育の社会的機能に着目する観点から俯瞰する。欧州における福祉国家再編の政治のなかで広がった社会的投資という着想は,就学前の教育・ケアや子育て支援,女性や若年無業者・不安定就労者の職業教育・訓練や就労支援など,広義の教育領域に関心を寄せる。他方で,1990年代以降の日本では学校教育の多様化・弾力化をうたう教育改革が進展し,今世紀に入ると「教育供給主体の多元化」まで射程に入れた構想も提出された。それは従来型の公教育体系に重大な変更を迫る可能性がある。本稿は「社会的投資戦略と教育」を問う問題設定が日本に位置付く歴史的文脈を把握するため,教育をめぐる国家と社会の関係変容の行方を展望しつつ,論点提示に力点を置いた歴史叙述を試みる。

  • 荒木 宏子
    2020 年 12 巻 1 号 p. 27-41
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     政府が教育に介入し公的支出が利用される上で,その成果や資源配分の効率性に対し,客観的な把握,議論は不可避のニーズと言えよう。経済学では欧米諸国を中心に,教育の資源投入と効果の因果関係に係る実証研究,及びその結果を用いた政策の定量評価が過去半世紀にわたり蓄積されてきた。従来の日本は,厳密な定量分析に耐えうるデータの収集・整備・公開が限定的であったこと等から,諸外国に比べ教育効果の定量研究の蓄積に遅れを取っていた。しかし昨今,利用可能な学力調査データ等の増加,多分野の研究者による定量研究成果等の発信に伴い,定量分析による政策評価への関心が急激に高まっている。本研究は教育効果の定量分析に用いる基本的な概念や手法の説明を交えながら,今日までの教育効果の定量分析が何を明らかにできたのかを整理する。その上で,政策の設計や選択に寄与する精緻な定量分析の実施や,その結果の取り扱い方についての課題を議論する。

  • ―「権利論的キャリア教育論」を手がかりに―
    尾川 満宏
    2020 年 12 巻 1 号 p. 42-54
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     本稿は,2000年代以降の重要な教育政策のひとつとして推進された「キャリア教育」に着目し,この教育理念が有するアクティベーションとしての側面(「基礎的・汎用的能力」の育成を通じて一人ひとりの「社会的・職業的な自立」をうながすという目的)を批判的に検討し,「権利論的キャリア教育論」を手掛かりとして,能力開発による「自立」と同時に「依存」可能なセーフティネットとしての社会形成を志向する教育論を提起した。そのうえで,この教育論を教育実践に具体化するため,経済的見返りよりも社会連帯の視点を強調するソーシャル・アクティベーションの考え方を初等中等教育のカリキュラムや学級経営論と関連づけて,実践的な試論を展開した。以上の議論から,より多くの人々が「自立」=「依存」しうる社会モデル・人間モデルを教育の理論的基盤に据える必要性と,社会的投資戦略として教育が負いうる役割の限界と可能性が示唆された。

  • ―「人的資本アプローチ」と「地域内蔵アプローチ」―
    筒井 美紀
    2020 年 12 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     学校の機能というと,人は教育機能(人的資本の蓄積)をまず思い浮かべがちだが,学校は地域社会・労働市場との「つながり」(社会関係資本)を創る機能も担ってきた。教育機会を平等にしても「マシュー効果」は消えないし,ハイテク社会でも低賃金・低スキルに留め置かれる人々が依然必要とされることを考えれば,労働供給サイド偏重の社会投資戦略(ヨーロッパがそうである)の限界は明らかである。したがって,「つながり」を創る機能を重視する「地域内蔵アプローチ」が,とりわけ「課題集中高校」では必要ではないか。すなわち,在学中・卒業後の移行パスを「なだらか」にする,言い換えれば,地域労働市場を参入しやすく留まりやすくしようとするアプローチである。これに関する本稿の,大阪府立西成高校とAダッシュワーク創造館の協働の事例からは,しかし,学校の資源的限界が明らかだ。ゆえに,各スケールでの制度的再調整が不可欠である。

小特集■妊娠・出産・育児と女性の就業継続
  • 渡邊 幸良
    2020 年 12 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー
  • ―出産後の就業継続をめぐる日独の比較―
    田中 洋子
    2020 年 12 巻 1 号 p. 71-85
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     経済成長の過程で男性フルタイム正社員と主婦という家族モデルを普及させた日本とドイツ(西ドイツ)を取り上げ,出産後の就業継続・断絶の状況が1990年代~2010年代に到って変化したのか否か,変化を支える条件があるとすれば何かを検討する。日本でもドイツでも女性の就業・活躍と出産・育児の両立を支援する政策が近年進み,特にドイツではケアを男女共同で行う就業 - ケア共同モデルが提起されるに到っている。そうした中,共働き世帯の増加が見られる一方で,子どもの出産・育児期における就業の断絶とそれによって形成される出産後主婦モデルが,両国でいかに変化してきたかを確認する。その上でドイツが日本と大きく異なる点として,出産・育児後に就業する際のパート(時短正社員)の雇用形態が,男女が共同して就業 - ケアを行うという家族モデルの形成にどのように資しているかを論じる。

  • ―第一子妊娠時の就業継続に着目して―
    伊藤 ゆかり
    2020 年 12 巻 1 号 p. 86-98
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     日本では仕事を続けていきたいという女性の就業継続のニーズが認識されて久しいが,未だに第一子出産前後の退職が多い状況が続いている。このような状況にもかかわらず,これまでの先行研究において周産期の就業継続についての検討が十分になされていない。本稿では,第一子出産前後の退職が多いことに着目し,第一子妊娠中の女性の就業継続に着目して検証する。本研究では2014年11月~2015年2月に行った妊娠安定期の妊婦を対象とした大阪市内の母親教室で実施した調査データを使い,妊娠中の就業継続について検討をする。「平成30年我が国の人口動態 平成28年までの動向」によると,第一子の母親の平均出産年齢は2016年で30.7歳と1975年と比べて5歳上昇となっており,出産の高年齢化が進んでいる。出産の高齢化に伴い,不妊を心配したことのある夫婦が増えている。本研究では,妊娠の高齢化に伴う要因も考慮し,妊娠時の就業継続に影響するかについても検討する。

本文
  • ―通知に基づく保護の限界―
    大澤 優真
    2020 年 12 巻 1 号 p. 99-110
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,地方自治体による外国人保護の法的根拠や正当性およびその限界について論じた。現在,外国人の生活保護を規定している通知が,地方分権化によって地方自治法上の技術的助言へと変化し,地方自治体が行う外国人保護の法的根拠が不明確化している。その状況下から,排外主義運動が地方自治体に対して,地方自治体が外国人保護を行う法的根拠や正当性を問う住民監査請求や裁判を起こしている。そこで,本稿ではそれら資料の分析を通して,地方自治体はどのように法的根拠や正当性を示しているのか明らかにした。その結果,地方自治体は「寄附又は補助」として外国人保護を行っており,地方自治体の裁量次第で外国人保護を行うか否か判断できる状況にあることが明らかとなった。以上を踏まえ,地方自治体の裁量の問題性,国の費用負担の根拠の不透明性,難民条約の観点から,通知に基づく保護は限界にあり,外国人保護の法制化が求められると指摘した。

  • 中尾 友紀
    2020 年 12 巻 1 号 p. 111-122
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,1938年における厚生省保険院総務局企画課の年金構想を検証し,それによって労働者年金保険の原案である「勤労者厚生保険制度要綱草案」を分析した。用いた資料は,主に国策研究会の報告書等に掲載された戦時労務対策委員会の会議録等である。

     その結果,第一に,1938年における企画課の年金構想は,世界恐慌によって把握された社会問題の解決を目的としたこと。第二に,戦時労務対策委員会への川村企画課長による「勤労者厚生保険」の提案は,社会保険をファンドとする「国民労務調整基金案」への抗弁であり,包括された失業保険は戦時労働政策にならなかったこと。第三に,1939年7月に企画課が起草した「要綱草案」は,川村による「勤労者厚生保険」を基礎に技術的事項を具体化したものであり,その目的は,主に「国民生活安定」をスローガンとした少額所得者の防貧だったことが明らかとなった。企画課は,恒久的に機能する公的年金の創設を目指していた。

  • ―国籍要因と地域経済要因―
    髙橋 義明
    2020 年 12 巻 1 号 p. 123-135
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     専修学校・日本語教育機関への留学生の急増もあり,日本への留学生は30万人を超えた。7割超がアルバイトに従事し,留学生が地域経済に与える影響も大きくなっている。本研究では日本教育支援機構のデータ等を活用し,これまで明らかになっていない留学生の資格外活動許可の規定要因として国籍と地域経済の産業構造を主に検討した。その結果,専修学校が立地し,工場が多い地域ではアルバイト従事率が高かった。一方,日本語学校・専修学校の生徒の中で所得水準の低い国出身の学生が多いとアルバイト収入比率が高かった。一般に留学生アルバイトとして飲食店,コンビニが注目されるが,以上の検討から工場立地が地域差として現れていることがわかった。また,所得水準の低い国出身者が少しでも稼ごうと地域経済の労働力の担い手となっていた。そのような中,留学前に抱えた負債との関係や勉学とアルバイトのバランスに留意し,留学生の経済的課題に目を配っていく改革が必要であろう。

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