本稿では、社会政策学会第147回大会の共通論題で掲げたテーマについて、その背景と意図について論じていく。
ケアとその保障をめぐる福祉国家による格闘を通じて、ケア供給のためのさまざまな仕組みづくりが行われてきた。高齢・障害・児童といった人々のケアについては、これまで家族や地域などの共同体がその供給を担ってきた。しかしその供給が難しくなり、国家による生活保障としてのケア供給が求められるようになったためだ。
しかしそのなかで、さまざまな形で起きていた権利侵害に目が向けられることはなかった。なかでもケアをする者の権利について、日本では家族による義務的介護の陰に隠れて大きな問題とされずにきた。
本稿では、これまでのケア保障とそれに係る制度を、ケアをする者と受ける者の権利という観点から捉えなおし、そういった権利侵害の現状や、介護の義務に対する考え方の整理といった点についての共通論題の各登壇者の論考につなげる。
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