社会政策
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小特集 生活困窮者自立支援事業体制の自治体間多様性:大阪府における地域雇用政策の展開のなかで
  • 仲 修平, 長松 奈美江
    2025 年17 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2025/10/30
    公開日: 2025/10/24
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  • ――支援件数と就労支援メニューに注目して――
    長松 奈美江
    2025 年17 巻2 号 p. 94-104
    発行日: 2025/10/30
    公開日: 2025/10/24
    ジャーナル フリー

     本論文では、大阪府内自治体間において生活困窮者自立支援事業の実施体制にはいかなる多様性がみられるのかを明らかにする。支援件数と支援メニューの分析によって、各自治体の特徴と政策のパターンを分析した。本論文の主要な知見は以下の3つである。⑴地理的剥奪指標と新規相談受付件数との相関関係は概ね強く、自立相談支援窓口への新規相談受付件数は地域のニーズを反映しているといえる。⑵しかし、困窮度の高い地域で包括的な事業が展開されているという事実を見出すことはできない。⑶大阪府内自治体においては、決して多数ではないが、既存求人の紹介につなぐだけでなく困窮者のみならず労働需要側へと働きかける支援が行われている。本小特集で対象とする4自治体は、地域資源を活用して先行施策を繋ぎながら、様々な地域団体との協力関係を築き多様な施策を組み合わせて困難層への包括的支援体制を構築した自治体として位置づけられる。

  • ――大阪府内三市の分析から――
    筒井 美紀
    2025 年17 巻2 号 p. 105-117
    発行日: 2025/10/30
    公開日: 2025/10/24
    ジャーナル フリー

     本稿は、大阪府内三市を対象に、生活困窮者自立支援事業の現体制の経路依存性をアクターレベルに降り立ち詳解する。主なデータと方法は、二十数年分の市議会会議録と予算説明書の分析である。各市の検索システムに「地域就労支援」「無料職業紹介」「パーソナルサポート」「生活困窮者」などを入力し、本会議や各種委員会でのやりとりを解読した。

     知見は次のとおり。①生困部局と他部局(主に労働部局)の連携は「パラレル型」「連携型」に分類できる。②生困事業の現体制は、その開始以前に各自治体が実施してきた関連・類似諸事業との差別化と機能的連結化を図るなかで形成されてきた。「同和・人権政策レガシー」を有する地域就労支援事業の一般施策化が、手続き的透明性と絡んで、正統性獲得問題の底流にあった。

     本稿の分析は、自治体と委託先との関係性が支援メニュー構築の仕方と委託先の決定に影響することを示唆している。この点は今後の重要な分析課題である。

  • ――事業主の関与をいかに引き出すか――
    櫻井 純理
    2025 年17 巻2 号 p. 118-129
    発行日: 2025/10/30
    公開日: 2025/10/24
    ジャーナル フリー

     本稿は生活困窮者自立支援制度における就労・訓練機会の開拓を主題とし、特に事業主などの「労働需要側」による事業への関与に注目する。主要な論点は、⑴就労支援事業の対象者・活動内容、⑵事業所見学・実習の位置付けと内容、⑶就労支援担当者の事業主への働きかけの3点である。労働力媒介機関にあたる自治体政策担当者が、タスク環境と経路依存性に埋め込まれたエージェンシーをいかに発揮しているのか、その内実を探る。

     主要な知見は以下の通り。⑴就労準備支援事業は就職や就労が特に困難な相談者に対象を絞って実施されている。⑵事業所見学・実習の機会は設けられているが豊富とは言えず、認定就労訓練事業は物理的・心理的障壁によってほとんど活用されていない。⑶就労支援担当者は協力事業所の開拓に困難を抱えているが、過去の活動から得た繋がりや知見、他事業・他部署の資源も活用しながら、事業主の関与を引き出す新たな試みを続けている。

投稿論文
  • ――問題化されつづける農村――
    松井 拓海
    2025 年17 巻2 号 p. 130-141
    発行日: 2025/10/30
    公開日: 2025/10/24
    ジャーナル フリー

     本論文では、1920年代後半から戦時期の日本において、「農村過剰人口問題」言説がどのように形成されてきたのかを明らかにすると同時に、「総力戦体制=福祉国家」の成立において、この言説がどのような意義を持ったのかを検討する。主な分析の対象としたのは、人口問題研究会や人口問題研究所の周辺で活躍した人口論者たちの言説である。

     農村の人口増加が直ちに「過剰」を意味するわけではない。20年代後半にはすでに都市への人口流出と農村人口の漸減という事実とは相反するように、農村人口の「過剰」は問題化された。日中戦争が始まり、農村での労力不足や、人口増加の必要性が主張されるようになっても、農村の「過剰人口」は論じられ続けた。このような問題構成により、あらゆる社会問題の原因を農村の人口動態に帰すると同時に、「過剰人口」を都市の外部で処分しようという発想が可能になった。

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