社会政策
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最新号
社会政策 第8巻第1号(通巻第23号)
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巻頭言
特集 外国人労働者問題と社会政策
  • 久本 憲夫
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー
  • 井口 泰
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 8-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     地球規模の気候変動などグローバルリスクの高まり,地域の経済統合の進展や各国における所得・富の格差の拡大などを背景に,国際的な人の移動は増加傾向をたどる可能性がある。本稿は,これらの情勢を踏まえて,わが国の外国人労働者問題の現状を,社会政策との関連において整理し,将来を展望することを目的とする。 わが国の外国人労働者問題の経緯と制度・政策の改革の現段階を詳細に考察すると,1990年に発足した現在の国の制度的枠組みは,依然として出入国管理政策に偏り,外国人を受入国・社会に統合する政策の多くは,自治体の取り組みに依存する。こうしたなかで,1)アジアでは,急速な少子高齢化と若年人口の移動により,高度人材のみならず,ミドル・スキル職種を中心に低技能職種に至る多様な労働需給ミスマッチが発生している。日本でも,就労する外国人労働者のうち,就労目的で入国した者は3割に達せず,在留する外国人の言語習得や資格取得の支援の必要性が大きい。2)アジアの新興国経済が台頭するなか,次第に先進国から新興国への人材移動が高まってきた。日本でも,今世紀になって外国人人材の流出傾向が強まったが,アジアからの留学生増加が人材流出を補ってきた。3)アジアでは,若年者の地方から大都市への移動が進んでいる。日本では,若年人口の減少する地方都市で,外国人人口比率が高まり,永住権を有する外国人が在留外国人全体のが半数に達し,外国人二世・三世を受入国社会に統合する施策の重要性が高まっている。4)アジアでも,ASEAN共同体の発足に伴い,外国人の人権確保が重要課題として取り上げられた。ところが,日本では外国人差別の禁止などに関する法制度整備の進展は遅い。 難民の増加などで国際移動が高まるなか,わが国の現行政策の枠組みをこのまま維持していては,外国人が安定した就業・生活を享受できず,労働需給ミスマッチを緩和することも難しい。在留する外国人と子どもたちが社会の底辺層を形成するリスクを高めないよう,入管政策と統合政策を二本柱とする包括的な外国人政策への転換が急務である。

  • 守屋 貴司
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 29-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,近年,「社会的な流行」ともなっている日本における「グローバル人材」という議論の歴史的展開やその中身について吟味をおこなっている。その吟味を通して,日本の「グローバル人材」の議論や政策が,欧米の「グローバルタレント」,「グローバルリーダーシップ」とは異なり,日本的な特殊な議論・政策となっている点を明らかにすることにしている。その上で,近年,日本多国籍企業においても展開しつつある「グローバルタレントマネジメント」の運用実態について紹介・分析し,日本多国企籍業の「グローバルタレントマネジメント」の特殊性について論究をおこなっている。そして,そうした「日本のグローバル人材」に関する議論・政策や日本多国籍企業の「グローバルタレントマネジメント」の特殊性の中,外国人高度人材(特に外国人留学生)・日本人海外留学経験者の確保・定着・育成問題について分析をおこなっている。

  • 松本 勝明
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     国際的な経済環境の変化,経済連携の強化などを背景として,外国から日本に来て働く外国人,外国に行き働く日本人が増加すると予想される。このような労働者及びその家族が安心して生活するうえで,適切な社会保障が受けられることが重要である。 しかし,各国の社会保障制度は,それぞれの事情を反映した国内制度として発展してきており,相互に整合性が図られているわけではない。このため,国境を越えて移動する労働者は,社会保障に関して様々な問題に直面する可能性がある。そのことは,労働者やその家族にとって問題があるだけでなく,労働者の移動を阻害する要因となる恐れもある。 本稿においては,国境を越えて移動する労働者を対象として,各国間での社会保障に関する調整が長年にわたり行われてきたEU及びドイツでの取組みを参考にして,外国と日本との間を移動する労働者の社会保障に関して生じる問題を解決するための対応策を検討する。

  • 池上 重弘
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     浜松市では輸送機器関連の製造業現場を中心に外国人労働者,特にブラジル人が数多く就労している。本稿ではまず,2006年と2010年の浜松市の外国人調査に基づき,労働市場への組み込みの実態と問題点を指摘した。次に浜松市における多文化共生施策の展開を,3人の市長の時代に応じて「黎明」「本格展開」「発展的継承」と性格づけてまとめた。浜松においては,行政,市教委,国際交流協会,NPO,大学等,多様なアクターのゆるやかな連携とNPO活動の層の厚さが強みである。一方,生活レベルで外国人と接している地縁団体(自治会)や外国人を雇用したり外国人が従業している企業の関与が不足している点と,外国人当事者団体間の連携不足が弱みである。一般市民の間に認められるゼノフォビア(外国人嫌い)と外国人の不安定就労は多文化共生に向けた脅威と言える。しかし,移住者の第二世代が受け入れ社会と外国人をつなぐ存在となりはじめている点は大きな機会である。

小特集1■「高度成長」と「日本的雇用慣行」の再検討
  • 遠藤 公嗣
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 69-
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー
  • 野村 正實
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 70-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     日本の高度経済成長期(1955〜73年)に対する研究が盛んになっている。しかしそれらの研究にもかかわらず,きわめて重要な論点が欠落している。それは,高度成長期において日本は歴史上初めて自営業が多数を占める経済社会から雇用者が多数を占める雇用社会に移行したという事実である。自営業の世界と雇用の世界とでは経済社会原理が基本的に異なっている。本稿は,自営業が果たしてきた役割,雇用社会に移行したことの意義を検討する。

  • 遠藤 公嗣
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 82-92
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     日本的雇用慣行の存在は,1945〜54年に認識された。その時期の労働市場は,有名な1951年「労働市場の模型」に示される。それは3層に分かれていて,氏原正治郎が画いたものである。「大工場労働市場」がその最上層であって,その男性正規労働者に日本的雇用慣行が存在した。「都市および農村の潜在的過剰人口」がその最下層であって,そこに雇用調整の機能をになう労働力がいた。高度成長期と安定成長期の合計36年間で,日本の労働市場は大きく変化した。この期間に,雇用調整の機能をになう労働力は,「都市および農村の潜在的過剰人口」にいる労働力から,企業内のいわゆる非正規労働者に変化した。しかし,男性の正規労働者の日本的雇用慣行は,大企業で存在しつづけた。1960年代から,日本的雇用慣行は非正規労働者を必要としてきたが,その多くは男性稼ぎ主型家族から供給された。1960年代からの日本の社会システムは,日本的雇用慣行と男性稼ぎ主型家族がつよく結びつき,相互に支えあうシステムであった。私はこの社会システムを「1960年代型日本システム」と呼ぶ。しかし,1990年代以降,日本的雇用慣行も「1960年代型日本システム」も,持続可能性を失っている。そのため,日本的雇用慣行の最後の形態は,「1960年代型日本システム」のもとでの日本的雇用慣行である。

小特集2■日本企業の変化と可能性:企業の社会的責任とグローバル枠組み協定の締結
  • 石川 公彦
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     これまでにも繰り返し指摘されてきたことであるが,近年,日本企業における経営スタイル,いわゆる日本的経営に大きな変化が認められ,様々な視点から論じられてきた。本小特集では,日本企業の変化について,ウチとソトの境界がかつてほど明確ではなく,企業ごとの「垣根」が低くなってきたことに注目する。「垣根」が低くなってきた結果,日本企業に広くみられてきた伝統的な「共同体モデル」とは異なる,新たなモデルが今日生じつつあるようにみえる。 本小特集ではその痕跡を二つの現象に求める。一つは,日本企業が2000年代以降にCSR経営へ急速に傾斜していった現象であり,二つには,同じく2000年代になって,グローバル枠組み協定を締結する日本企業および労働組合が出てきたことである。本小特集の3論文は,これら二つの現象の関連に視線を向けつつ,日本企業の変化の性質,意義,可能性を考察する。

  • 橋村 政哉
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 98-110
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     従来,日本の企業およびその経営は閉鎖的であるといわれてきた。近年,「外圧」から社会への考慮が求められており,日本企業はCSRを展開している。日本企業のCSR経営は等しく「社会」(=ステイクホルダー)を考慮するものになりえているだろうか。今日のCSRの震源は日本の国外にある。市場原理主義のグローバルな浸透により,社会的な負の影響があらわになり,国際機構までもが企業の行動原理に対する基準を示さなければならなくなってきた。しかし,日本のCSRの実相をみると,経済,環境に偏った歪なステイクホルダーへの考慮になっている。CSRは市場原理主義に規定されているかのようである。社会への考慮は依然として日本企業の課題であるが,改善の道がないわけではない。それは,労使関係を活かしたCSRの実践にあると考えられる。そこで,近年における個別企業の労使および国内産業別労働組合,国際産業別労働組合との間で「グローバル枠組み協定」を締結する企業行動に着目し,これが社会への考慮の改善に向かう一つのパターンになりえることを提示する。

  • 早川 佐知子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 111-126
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本論文の目的は,EU諸国において,グローバル枠組み協定が形作られた背景と意義を明らかにすることである。その手段として,締結企業の1つであるVolks Wagen社を採りあげ,同社のグローバル枠組み協定への,また,CSRへの取り組みを紹介し,コーポラティズムとの関係を考えてゆきたい。 はじめに,EU諸国のCSRの特徴,グローバル枠組み協定が生まれた背景を明らかにすることにより,これがヨーロッパで生まれた必然性を論ずることができるであろう。そして,グローバル枠組み協定のもつ意義を,サプライヤー・マネジメントに焦点を当てながら,明らかにする。グローバル枠組み協定はもともと,途上国の下請け企業の労働者を保護することを目的として,ヨーロッパのグローバルカンパニーと労働組合が声をあげてつくったものである。そのような趣旨に立ち返り,サプライヤーの労働者を保護するために,自動車組み立て企業がどのような策を講じているのかを見てゆきたい。

  • 渡部 あさみ
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 127-139
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     1990年代以降,経済のグローバル化が一層進行し,安い労働力を求めた企業は,生産の中心をアジアなどの途上国に移した。こうした変化は,製造過程のみならず,サプライチェーンの中で発生する問題を把握することも困難にした。そうした中,グローバル枠組み協定(GFA)を締結する事例がでてきている。GFAとは,労使が一体となってILOの中核的8条約の遵守などの公約を協定という形で,広く社会に宣言し,労使共同で社会的責任を果たしていこうとする行動指針である。日本では,2007年に髙島屋,2011年にミズノ,2014年にイオンがGFAを締結している。本稿は,これら三事例の分析を通じて,その取り組みが,①1990年代以降増え続けている非正規雇用労働者も含めたものであること,②海外サプライヤーに対する監視体制強化へ向けたものであること,③国際化する労使関係への対応として,日本の協調的労使関係を海外の職場へ広めていく狙いがあることを明らかにした。

投稿論文
  • 辰巳 佳寿恵
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 140-152
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本稿では,障害者権利条約第27条における障害をもつ労働者への「合理的配慮」を前提として,中途視覚障害者の雇用継続の障壁とその克服手段を,裁判事例を通して追究した。方法は,①中途視覚障害を理由として解雇され,地位確認等請求裁判を行った事例について,原告による証言,裁判資料をもとにした事例研究,②同様の裁判事例との比較考察を行うために,当該裁判に関する資料分析や支援の会事務局長を対象とした面接による聞き取り調査であった。その結果,現状において,⑴雇用継続のためにはリハビリテーション訓練を行うことが有効であること,⑵障害当事者団体等による運動による支援は弱体化していることが明らかになった。⑴ ⑵を克服するために,障害をもつ労働者への合理的配慮を保障する「リハビリテーション権」を法制度として障害者関連法に位置づける必要があると考えられた。

  • 福田 順
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 153-164
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本稿では農林漁業団体職員共済組合(農林年金)が農協職員の人事労務管理に与えた役割について論じる。第二世界大戦後の農業協同組合は職員の高い離職率に苦しんでおり,その解消には老後の年金給付を充実させることが必要とされた。公的年金制度の分立を招くという周囲からの批判もあったものの,農協等の陳情活動や農協と強い関係を持つ農林省の後押しもあり,農林年金は設立された。本稿では以下のことが明らかになった。第1に,他産業に比較して農協職員の離職率は実際には低かった。第2に,農林年金が導入された時期は職員の賃金が低かったこともあり,農林年金の給付水準は低く,農協職員の離職率を抑制することができなかった。第3に,農林年金の保険料負担が増えたことで,若年女性の人員整理が増えた可能性があることが分かった。第4に,農林年金は1990年代以降の農協組織の再編の足かせとして,機能した可能性があったことが分かった。

  • 小田巻 友子
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 165-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究は,協同組合が福祉供給主体の1事業形態として適当である理由として,新しい協同組合で観察されるコ・プロダクション(Co―production)の本質を明らかにすることを目的とする。コ・プロダクションとは,公的なサービス生産過程における自発的な利用者と専門家による協働がサービスの質や量を高めることを意味する概念とされている。本研究では,第1に,各論者によって様々に用いられているコ・プロダクションの概念を分析し,欧米と日本での概念受容の差異を説明する。第2に,コ・プロダクションの典型事例としてスウェーデンの親協同組合就学前学校,新事例として日本の医療福祉生活協同組合を取り上げる。そして,その効果を分析することを通して,コ・プロダクションとは,ポスト福祉国家において,行政と専門家のサポートに基づく利用者主権を実現するサービス供給システムだと結論付ける。

  • 菊池 いづみ
    原稿種別: 本文
    2016 年 8 巻 1 号 p. 179-191
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/11
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,近年の地域包括ケアの推進を高齢者保健福祉事業の再編過程に位置づけ,その責任主体であると同時に介護保険の保険者である基礎自治体の役割強化に着目し,家族介護に対する支援事業の現状と課題を明らかにすることである。その際,急速な高齢化の深刻な大都市圏に焦点をあてた。分析には東京都区市町村を対象としたアンケート調査の結果を用い,支援事業の区市町村別の実施状況を明らかにした。そのうえで①家族介護支援策の優先度,②地域包括支援センターの設置主体,③自助・互助・共助・公助の期待度との関連要因を分析し,地域包括ケア推進の観点から家族介護に対する支援事業の課題を検証した。東京都のように相対的に財政基盤に恵まれた大都市圏では,自助への期待度は高い。家族介護者の自立にも配慮し,直接支援対象とする事業導入の検討が求められる。先進諸国にならい,家族介護者を地域包括ケアシステムに統合する視点が重要である。

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