本稿は、大阪府内三市を対象に、生活困窮者自立支援事業の現体制の経路依存性をアクターレベルに降り立ち詳解する。主なデータと方法は、二十数年分の市議会会議録と予算説明書の分析である。各市の検索システムに「地域就労支援」「無料職業紹介」「パーソナルサポート」「生活困窮者」などを入力し、本会議や各種委員会でのやりとりを解読した。
知見は次のとおり。①生困部局と他部局(主に労働部局)の連携は「パラレル型」「連携型」に分類できる。②生困事業の現体制は、その開始以前に各自治体が実施してきた関連・類似諸事業との差別化と機能的連結化を図るなかで形成されてきた。「同和・人権政策レガシー」を有する地域就労支援事業の一般施策化が、手続き的透明性と絡んで、正統性獲得問題の底流にあった。
本稿の分析は、自治体と委託先との関係性が支援メニュー構築の仕方と委託先の決定に影響することを示唆している。この点は今後の重要な分析課題である。
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