本稿は、「家族ストレスモデルの世代間連鎖」メカニズムを想定した上で、子どもの貧困と児童虐待との関連を明らかにすることを目的とする。本稿では、2021年に全国に居住する20~69歳の男女2万名を対象に実施された「生活と意識に関する全国調査」の個票データを用いて、分析を行った。
分析の結果、親の子ども期における貧困経験は、親の子ども期における被ネグレクト経験と親の現在における貧困を媒介して、親の子に対する身体的虐待の発生に正の効果を与えており、「家族ストレスモデルの世代間連鎖」メカニズムは部分的に支持された。
以上の結果から、児童虐待の発生を予防するためには、貧困世帯への経済的支援を拡大し、「家族ストレスモデルの世代間連鎖」を緩和することが有効であることが示唆された。
抄録全体を表示