社会政策
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家賃負担が子どもの生活に与える影響
――広さ・家賃負担・その他の支出のせめぎあいの実証分析――
小田川 華子
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2020 年 11 巻 3 号 p. 139-150

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抄録

 本研究の目的は,低所得世帯において家賃負担が子どもの生活にどう影響しているかを明らかにし,子どもの相対的貧困対策について示唆を得ることである。分析対象は東京都「子供の生活実態調査」(小5,中2,16~17歳親子,2016年)の回答者のうち家賃を支払う世帯(n=1435)で,所得・家賃負担率・住宅の広さの組み合わせで11群を生成し,生活に現れる困難の程度の違いについて回帰分析を行った。分析の結果,年収214~359万円で狭小住宅に住む高家賃負担の世帯では,衣食住,その他の子どものための支出や学習環境などにしわ寄せがいっていること,年収359万円未満層のうち非狭小住宅で高家賃負担の世帯は「見えない貧困」層の傾向があること,年収359万円未満層の低家賃負担世帯は家賃減免等を受けてもなお子どもの生活が圧迫されていることが明らかになった。家賃補助,その他の給付等の充実,子育て世帯向けの低家賃住宅の供給が求められる。

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© 2020 社会政策学会
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