ドイツでは大学の研究職の有期雇用割合が突出して高く,最も不安定雇用が多い職種となっている。本稿では大学教職員の国際比較に向けてドイツの大学の雇用構造を解明するとともに,ベルリン・フンボルト大学を事例として研究職の仕事と生活の関係を検討する。サービス労働組合,ベルリン・フンボルト大学人事部および研究者へのインタビュー調査,また同大学人事資料の分析を通じて明らかになったのは次の点である。第一にドイツでは日本よりも学術研究職の雇用が構造的に不安定であり,終身公務員である少数の教授を除いてほぼ全員が任期付の有期雇用となっている点,第二にこれと反対に,研究支援に携わるスタッフ職に関しては近年の法改正で雇用の安定化が大きくはかられている点である。学術研究職の有期雇用は歴史的な制度であるが,現在は高給与の専門職として雇用期間以外の労働条件は悪くはなく,時短勤務により研究と生活の調整が可能であることがわかった。