2025 年 17 巻 2 号 p. 94-104
本論文では、大阪府内自治体間において生活困窮者自立支援事業の実施体制にはいかなる多様性がみられるのかを明らかにする。支援件数と支援メニューの分析によって、各自治体の特徴と政策のパターンを分析した。本論文の主要な知見は以下の3つである。⑴地理的剥奪指標と新規相談受付件数との相関関係は概ね強く、自立相談支援窓口への新規相談受付件数は地域のニーズを反映しているといえる。⑵しかし、困窮度の高い地域で包括的な事業が展開されているという事実を見出すことはできない。⑶大阪府内自治体においては、決して多数ではないが、既存求人の紹介につなぐだけでなく困窮者のみならず労働需要側へと働きかける支援が行われている。本小特集で対象とする4自治体は、地域資源を活用して先行施策を繋ぎながら、様々な地域団体との協力関係を築き多様な施策を組み合わせて困難層への包括的支援体制を構築した自治体として位置づけられる。