社会政策
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家族福祉論の解体 : 家族/個人の政策単位論争を超えて
久保田 裕之
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2011 年 3 巻 1 号 p. 113-123

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抄録

本稿では,「家族の個人化」と呼ばれる状況のもと,家族福祉論をその正当化根拠から批判的に検討することによって,家族か/個人かという政策単位に関する議論を一歩進めることを目的とする。具体的には,政策単位をめぐるこれまでの議論を概観することで,家族のニーズを個人の選択に還元する個人単位化論も,家族自体をある種のニーズとして扱い続ける家族福祉論も,「家族の個人化」と家族福祉の間の緊張関係を克服できないことを示す。次に,家族福祉とニーズ論との関係を整理することで,ニーズ概念の限定性と優先性から,ニーズに対する福祉の<過小>と<過剰>という二つの危険を抽出し,家族自体をニーズと捉えることのパターナリズムを批判する。その上で,フェミニスト法学・倫理学における<依存批判>の議論を援用することで,従来の家族に期待されてきたニーズの束を分節化し,家族を超えて福祉の対象とする新たなアプローチを提唱する。

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© 2011 社会政策学会
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