2007年3月に発生した石川県能登半島地震は,過疎・超高齢化の進む能登地域に甚大な被害をもたらした。本稿は,金沢大学能登半島地震学術調査部会生活・住居・福祉班が継続的に取り組んできた能登半島地震被災者への聴き取り調査から,災害発生時,避難所,仮設住宅,自宅・災害公営住宅という被災者の生活の場の変遷と,そこにおける生活問題の実態を論じる。災害被災地では,社会保障制度が対象とすべき様々な生活問題(医療・福祉・所得・居住等)が発生もしくは顕在化するが,それらは被災者が自宅や災害公営住宅へ「帰宅」した現在も抜本的に改善していない。以上の事実を概観し,災害の問題への被災者生活保障の視点(社会科学的視点)の導入の重要性と,被災地復興へ向けた「平時」からの社会保障制度の拡充の重要性を論じる。その上で,能登や東北を含む過疎・超高齢化の問題を抱えた被災地の復興への教訓・課題を提示する。