社会政策
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「古い公共」から「新しい公共」へ : 歴史的視点からみる地域団体(小特集に寄せて,<小特集1>地域における「新しい公共」の担い手-長野県からの報告)
田中 洋子
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2013 年 5 巻 1 号 p. 73-82

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抄録

共通論題報告に連動する形で,秋季大会企画委員会は,特別分科会「地域における『新しい公共』の担い手-長野県からの報告」を開催した。長野での動きやその問題点について,長野県県民協働・NPO課,NPO中間支援組織,社会福祉法人,社会的企業という四つの現場の当事者からの報告が行われた。小特集としてその中の3報告を載せるとともに,本稿では当日でた「古い公共」と「新しい公共」の関係性を問う議論について,歴史的考察を行う。ここでは,(1)生活に根ざした近隣団体(「古い公共」)が長く日本の地域社会を支えてきたが,高齢化・過疎化により20世紀末以降衰退期を迎えていること,(2)それが国にも地域の現場にも,危機感と具体的な対応の必要性(「新しい公共」)を呼び起こしたこと,(3)その担い手として期待されるNPO等の組織は,旧来の近隣団体と切れており,地域からの信頼も組織的・財政的存立基盤も十分とは言えないこと,(4)しかし地域の衰退に対応して,旧来の担い手以外も含む新しい組織の促進・定着が求められていること,(5)市民の自主的団体が歴史的に継続して発展したドイツと異なり,そうした経験のない日本にとって「新しい公共」は歴史的挑戦となっていることを論じる。

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© 2013 社会政策学会
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