2013 年 5 巻 1 号 p. 124-135
スウェーデンの職務再設計は,カルマル工場,ウッデヴァラ工場などの事例をとおして世界的にも知られてきた。しかし,これらの改革の意義が今日もつその意義についてはほとんど語られなくなってしまっている。そこで本稿では,スウェーデンの職務再設計の経過を振り返り,同国の改革のねらいは,従来言われてきた経営参加論,産業民主主義の拡大という政治的領域に限られるものではない。改革のもう一つの課題として,テーラー,フォード型生産モデルに対する,社会制御の模索という課題が存在したことを強調し,改革がどのような原理によって導かれたかを明らかにした。さらに生産の管理分業という視点を付け加えることで,トヨタに代表される日本的生産方式との比較を試み,スウェーデンの職務再設計が,技術制御の視点から見ると,TPSに代表される,労働過程から生産を制御する方向へと転換したことを仮説として提起している。