社会政策
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金属機械・海運における産業レベル賃金交渉(<特集3>日本の産業別組合機能の研究と手法)
藤井 浩明
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2015 年 6 巻 2 号 p. 91-102

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抄録

産業レベル賃金交渉の事例として,全国金属労働組合石川地方本部によって展開された「石川方式」の団体交渉と船員の団体交渉を取り上げ,企業横断型の賃金交渉が形成された条件について考察する。「石川方式」とは,地方本部の統制のもとで各社交渉を連携させて,労働条件を企業横断的に改善することを目指した交渉方式であった。また,船員の団体交渉は,各船主団体と全日本海員組合とによる統一交渉が特徴であったが,1980年以降,統一交渉グループの崩壊が進み,個別交渉が拡がっていった。2つの事例研究から次のことが明らかになった。企業横断的な賃金交渉が形成されるためには,産業内における業態,規模,収益性が均一な企業集団が存在すること,労働組合の統制力・独占力が強いこと,企業別労働組合の共同行動を促進する産別労組役員が存在することが必要となる。

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