抄録
情報システムを開発する際,業務(ビジネス)の要求定義が必要であることが多い.ビジネス要求定義における最初の活動は,ステークホルダの要求獲得である.ステークホルダの要求を獲得するために,情報システムに直接かかわるベースラインステークホルダを基点とし,ステークホルダ間の情報のやりとりに着目しながら,関連するステークホルダを識別する.従来のステークホルダ識別技術では,(1)ステークホルダ間の情報のやり取りがわかりにくい,(2)ステークホルダ間の役割分担や責任境界を記述することができない,(3)ステークホルダ間の情報のやり取りが下流工程に引き継がれない,という3つの問題がある.G-RDは,業務間の情報のやりとりに着目し,情報を発信,あるいは,受信する実体を要素と定義し,要素と要素を結ぶ情報を連携と定義する連携図である.G-RDを活用し,ステークホルダを要素とすると,ステークホルダ間の情報のやり取りを明確にすることができる.そして,従来のステークホルダ識別技術が抱える3つの問題を解決することができる.本論文では,ビジネス要求定義と次工程の情報システム要求定義にG-RDを適用した事例を紹介し,G-RDが有用であることを示す.