抄録
現在,どの企業の情報システム部門においても保守は深刻な問題になっている.それは,既に膨大な保守対象の既存資源を抱えている,情報システムが必ずしも保守容易な構造で開発されていない,重要なシステムほど保守に保守が重なりプログラムが保守に耐えられなくなっている,要求ベースでつぎはぎの形で開発してきたためデータや機能に重複が多い,などが原因に上げられる.その意味で,近年,ビジネスが拡大してきているアウトソーシング業務においてもソフトウェア保守の品質と生産性を向上させることは重要な課題となっている.本稿では,ある情報システム部門のソフトウェア保守環境を作業手順,ツール,人的側面などの観点から調査し,改善案を提起した事例を,調査の方法論を含めて紹介する.今後のアウトソーシング業務をはじめとするソフトウェア保守環境の改善と保守のプロジェクト管理に参考になることを目的とする.