抄録
風化黒雲母の様な層状粘土鉱物では様々な収着サイトが存在すると考えられており、Cs イオンは層間に取り込まれると考えられている。一方でカオリナイトのような粘土鉱物においては、層間に陽イオンを持たないことから、表面・端面サイトにのみ収着すると考えられている。本研究では福島第一原子力発電所事故後に放射性 Cs により汚染された実土壌に近い濃度の Cs 収着粘土鉱物試料を調製し Cs K 吸収端における X-ray Absorption Fine Structure (XAFS) 測定を行い、風化黒雲母とカオリナイトにおける Cs 周りの局所構造の違いを観測した。結果、層間サイトに収着していると思われる風化黒雲母と表面・端面サイトに収着していると思われるカオリナイトとでは、特に低濃度領域において Cs 周りの局所構造が大きく異なることが判明し、Cs 収着様式によって Cs イオンの収着安定性が大きく異なることが示唆された。