SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
最新号
SPring-8 Document D 2025-013
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
Section A
  • Tomoaki Kubo, Mai Ikehara, Kazuya Moriyama, Yuki Mori, Taiki Miyazaki, ...
    2025 年13 巻5 号 p. 271-277
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     We have advanced the conventional MA6-6 type AE measurement system to establish a large strain shear deformation field under pressure conditions up to 10 GPa, enabling in-situ X-ray observation of reaction-induced shear instability. This achievement allows us for the monitoring of slip displacement resulting from strain localization and the evaluation of slip stability through AE activity at shear strains exceeding 200%, in addition to the acquisition of stress-strain curves and reaction kinetics. We applied this methodology to the dehydration reactions of antigorite and lawsonite, as well as olivine-spinel phase transition in fayalite. The method developed herein provides a powerful tool for experimental research on shear instability processes, contributing to a better understanding of the mechanisms underlying intermediate-depth earthquakes.
  • 保井 晃, 池永 英司
    2025 年13 巻5 号 p. 278-282
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     硬X線光電子分光 (HAXPES) 計測の適用試料の拡大のために、可変磁場印加機構を開発した。開発した機構では、ネオジム永久磁石の向きを変えることで、試料上での磁場強度を変化させることが可能である。本機構を用いて Cr/Co 多層膜試料の HAXPES スペクトルの磁気円二色性測定を行うことにより、試料上での磁場強度を変化できることを実証した。本実験のセットアップは磁性多層膜だけでなく、一般的な非磁性体試料にも適用可能であり、磁場印加 HAXPES 計測の可能性を大きく拡大する。
  • 三浦 永祐, 弘中 陽一郎, 栗田 隆史, 菖蒲 敬久, 城 鮎美, 宮西 宏併, 尾崎 典雅, 渡利 威士, 重森 啓介
    2025 年13 巻5 号 p. 283-288
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     数 100 J の高パルスエネルギーレーザーを用いてレーザーピーニング加工されたステンレス鋼の残留応力分布を測定した。直径 3 mm の集光径で照射した場合、圧縮残留応力層は表面から1.5 mm に達し、その形状は円錐形であると推測された。この結果はレーザー照射域外周からの希薄波の侵入による衝撃波の減衰が、無視できないことを示している。2つの異なる強度を持つ同心円状のレーザー照射域を形成することで、直径 1 mm の集光径でも圧縮ひずみ層は 1.2 mm に達した。外側の照射領域で駆動される衝撃波がその外周からの希薄波の侵入を妨げ、内側の照射領域で駆動される衝撃波の深部への伝搬をもたらしたと考えられる。レーザーピーニングの残留応力分布は、レーザー強度分布により制御できることが実証された。
  • 中務 真人, 森本 直記, 荻原 直道
    2025 年13 巻5 号 p. 289-292
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では最古のコロブス亜科(オナガザル科)の頭骨の形態学的研究を行った。対象資料はケニアで発見された約 1000 万年前のマイクロコロブスの頭蓋骨である。ほぼ全体を残すものの化石化過程で強く変形していた。CT 画像からは少なくとも拡大した上顎洞はもたないことが示された。骨とマトリックスの分離が困難であったため、外表面形状を対象としたレトロデフォーメーションを行った結果、アフリカのコロブス的特徴が認められた。しかし CT 画像で観察できる破損状況と復元結果を比較した結果、非破損部の形態が修正される傾向も認められ、この復元結果がただちに系統関係を示すかについては結論できないと考えられた。
  • 三浦 永祐, 弘中 陽一郎, 栗田 隆史, 菖蒲 敬久, 冨永 亜希, 宮西 宏併, 尾崎 典雅, 渡利 威士, 重森 啓介
    2025 年13 巻5 号 p. 293-298
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     中空のビームパターンを持つレーザーによってレーザー駆動衝撃波を材料深部に伝搬させる手法を考案した。中空ビームパターンを持つレーザーによってレーザーピーニング加工したチタン合金試料の残留応力分布を測定し、深さ方向の残留応力分布にレーザー未照射域の半径と同じ深さからプラトーが見られ、衝撃波が深部に伝搬したことが示された。この結果は2次元流体シミュレーションによっても裏付けられており、中空ビームパターンを持つレーザーによる衝撃波制御を実証すると共に、その挙動を明らかにすることができた。
  • Kyle Sutherlin, Li Cheng Kao, Junko Yano
    2025 年13 巻5 号 p. 299-301
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     We explored the use of Nuclear Resonance Vibrational Spectroscopy (NRVS) for the characterization of heterogeneous electrocatalysts for the water oxidation reaction using NiFe oxide electrocatalysts. We anticipate that NRVS will provide unique information for the mechanistic understanding of these catalysts, by probing the metal-centered vibrational modes.
  • 三浦 永祐, 弘中 陽一郎, 栗田 隆史, 菖蒲 敬久, 城 鮎美, 宮西 宏併, 尾崎 典雅, 渡利 威士, 重森 啓介
    2025 年13 巻5 号 p. 302-305
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     高出力レーザーを金属材料に照射し、レーザーピーニングされた試料内部の加工状態を分析するため、一面を光学精度で研磨した2つの金属片を密着させて一体化してバルク材料を模擬する “割子” と呼ぶピーニング加工試料回収用ターゲットを考案した。レーザーによって金属平板材料内部と割子の密着面に形成されるひずみ分布を測定し、割子を用いた残留応力分布測定の妥当性を検証するための実験結果について報告する。
  • 鈴木 基寛, 関澤 央輝, 菅 大暉, 新田 清文
    2025 年13 巻5 号 p. 306-310
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     フレネルゾーンプレートによる結像顕微光学系とダイヤモンド移相子を組み合わせることにより、Full-field 結像によるX線磁気トモグラフィー法の開発を行った。この方法により、従来の走査型X線磁気トモグラフィー法よりも空間分解能を向上し、同時に測定時間を短縮することを目的とした。GdFeCo 膜および Nd2Fe14B 焼結磁石試料に対する測定結果を示し、得られた空間分解能や画像ノイズについて議論する。
Section B
  • 福田 竜生, 吉井 賢資, 西畑 保雄, 川崎 卓郎, 坂本 友和, 山中 暁, 金 珠暎, 村山 一郎, 加藤 敬典, 金 允護, 馬場 ...
    2025 年13 巻5 号 p. 311-316
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     焦電効果を利用する温度変化発電のメカニズム解明のため、PMN-xPT の相図上の MPB 付近を含む試料を用いた発電熱電サイクル運転中の素子の時分割X線回折実験を行った。発電能と MPB との関係、焦電効果の温度変化由来部分など、明確には明らかにできなかった。
  • 吉原 大創, 米田 安宏
    2025 年13 巻5 号 p. 317-323
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     酸化鉄微粒子と微生物に於ける相互作用を微粒子の結晶性に注目して評価した。微生物が酸化鉄微粒子と近接する環境下において酸化還元反応を保った状態で培養し、微生物が酸化鉄微粒子に与えた影響を電子顕微鏡 (走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡) と放射光を用いた高エネルギーX線回折で調べた。
     その結果、酸化鉄微粒子表面に培養前では見られなかった突起物が培養後には観察され、その結晶は siderite ( FeCO3 ) の面間隔に近い。hematite ( Fe2O3 ) と magnetite ( Fe3O4 ) の2相を仮定した PDF 解析では培養処理前後で 4 Å 以下の局所構造に殆ど変化はなかったが、4 ~ 6 Å では構造ゆらぎが生じていた。この構造ゆらぎが酸化鉄微粒子と微生物に於ける酸化還元反応による突起物形成に寄与していると考える。
  • 後藤 和宏, 高橋 美郷
    2025 年13 巻5 号 p. 324-329
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     BL16B2 でX線透視像観察を行い、合金中の晶析出物観察を試みた。2種類の合金を対象とし、インジウム (In) とスズ (Sn) の二元系合金において凝固する際に晶出した化合物、長時間の熱処理によりアルミニウム (Al) 中に析出した Al-Fe 系化合物の形態を可視化した。前者では、原子番号が近い In と Sn のコントラストを明瞭にするためには、観察に用いる入射X線のエネルギーを両元素の吸収端の間に設定することが有効であることを確認した。後者では塑性変形時に生じるボイドが析出物の近くに生じやすいことが示唆された。
  • 山村 浩樹, 田路 智也, 小林 敦, 丸山 研, 豊田 由衣, 木村 礼子, 冨永 哲雄, 泉 謙一, 江島 丈雄, 大河内 拓雄
    2025 年13 巻5 号 p. 330-333
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、有機絶縁材料の膜面内元素・構造分布の把握を目的として、SPring-8 BL17SU の光電子顕微鏡測定における帯電と試料ダメージの防止方法を検討した。有機薄膜を形成した試料基板上へ Pt、Cu、Au 薄膜を付与し、O K 吸収端近傍のX線吸収スペクトル測定を通して、Pt 0.5 nm 膜がスペクトルの品質維持に最適であることを見出した。今後は Pt 0.5 nm 付与の条件を用いて、有機材料の分析により有用な C K 吸収端X線吸収スペクトルの測定条件確立を進める予定である。
  • 久保 優吾, 徳田 一弥, 倉持 幸治
    2025 年13 巻5 号 p. 334-340
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     フレキシブルプリント基板の基本構成である銅(Cu)とポリイミド(PI)の密着性確保に重要な中間接着層の候補材料としてバナジウム(V)を選び、真空蒸着法により PI 上に V 層を形成した試料について、放射光硬X線光電子分光法と走査型透過電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法により V/PI 界面の状態を調査した。高温で作製された V/PI 界面には炭化バナジウムの存在が確認され、これが効果的に酸化を妨げたと考えられる。界面酸化は密着性を低下させる因子になり得ることが知られており、プロセス温度の最適化により密着性を向上できる可能性を示した。
  • 首藤 靖幸, 加々良 剛志, 和泉 篤士
    2025 年13 巻5 号 p. 341-345
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     硬X線光電子分光法を用いて電子材料用添加剤であるトリアゾール系化合物と Al、Ag の相互作用状態の分析を行った。Al 1s、Ag 3d、N 1s および S 1s のプロファイルを分析した結果、チオール基を有さないトリアゾール系化合物は Al とは表面酸化膜との間で静電相互作用を発現、Ag とは非共有電子対供与により吸着していることが示唆された。一方、チオール基を有するトリアゾール系化合物は Al、Ag いずれとも共有結合を形成することが分かった。
  • 由井 悠基, 柳田 恵, 野中 敬正, 山口 聡, 山本 敏生, 鳥本 司, 井部 将也
    2025 年13 巻5 号 p. 346-350
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     CO2 を電気化学的に還元する電極触媒として Cu 合金ナノ粒子を探索した結果、Cu32Au68 合金が優れた触媒特性を示すことが判明した。本研究では、その触媒特性のメカニズムを解明するために operando XAFS 測定を実施した。その結果、CO2 還元中も Cu32Au68 中の Cu は酸化状態を維持していることが確認され、Cu32Au68 が CO2 を吸着しやすく、CO2 被覆率が高くなることが高活性の要因の一つであると考えられる。
  • 菅野 聡, 米村 光治, 大浦 夏実, 山口 樹, 豊川 秀訓
    2025 年13 巻5 号 p. 351-355
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     鉄鋼材料のねじり変形過程の現象解明を目的として、高エネルギーX線を用いて SUS304 鋼のねじり変形過程の転位密度変化のその場観測技術を確立した。2 °/s または 180 °/s の速度で 720° までねじり変形させながら転位密度の変化と加工誘起マルテンサイト変態を観測した。そして、ねじり変形(多軸応力)の相変態挙動と転位密度変化を定量評価し、冷間圧縮(一軸応力)との ε 相発達の差異を明らかにした。本技術により、実機製造プロセスにおける実材料の特性向上メカニズムの解明や効果的な材料開発へ展開する。
  • 森 智比古, 二宮 翔, 西堀 麻衣子
    2025 年13 巻5 号 p. 356-359
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     大気中の CO2 を原料として液体合成燃料(e-fuel)を製造する技術開発は、カーボンニュートラルの実現に向けて重要な鍵となる。本技術の実用化には、逆水性シフト(RWGS)反応およびフィッシャー・トロプシュ(FT)合成において高い活性を有する触媒の探索が必要であり、各反応の活性種の解明が重要である。そこで、実反応下における鉄系触媒の構造解析により RWGS 反応と FT 合成の活性種を特定することを目的として、in-situ XAFS 測定を行った。本実験により、反応ガス雰囲気下で鉄系触媒は RWGS 反応では Fe が、FT 合成では鉄カーバイドが主たる活性種であることが示唆された。
  • 豊永 詞, 石川 湧己, 小川 雄一, 島田 武司, 藤井 柾志, 太田 元基, 尾原 幸治
    2025 年13 巻5 号 p. 360-363
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     Fe 基アモルファスリボンには材料の熱処理による構造緩和と材料の脆さおよび磁気特性に相関があると考えられているが、具体的に構造緩和がどのように特性へ影響しているかは実証されておらず推測の域を出ていない。一方、放射光X線を利用した二体分布関数(PDF)の取得により、構成原子の熱処理による挙動を微視的に観測することが可能と考えられる。本研究では SPring-8 の BL04B2 を利用し、アモルファスリボンの PDF を測定、材料の構造と脆さや磁気特性などの特性との相関を明らかにすることを目的とした。得られた PDF プロファイルの熱処理温度依存性から、2.55 Å に見られた原子間距離が延びることによって Tc の上昇が起こる可能性が推測された。また、r = 4.20 Å のピークに起因する構造は Tc に関係が無いことが推測された。今後は本実験で得られた結果をもとに、テンションアニール材の構造の調査を実施していく。
Section C
  • 佐藤 眞直
    2025 年13 巻5 号 p. 364-366
    発行日: 2025/10/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
     加工油脂食品を構成する油脂の加熱・冷却過程における結晶構造変化の解析技術確立を目的として、高純度油脂試料の冷却加熱下その場時分割X線回折測定を行った。トリパルミトイルグリセロール(PPP)を測定試料とし、BL19B2 の SAXS 装置においてビームライン装備の試料冷却加熱装置を用い、80 ℃ → −4 ℃ → 80 ℃ の過程における回折プロファイル変化を測定した。その結果、冷却過程では約 40 ℃ で α 相が生成、その後の加熱過程では約 42 ℃ で結晶相が α 相から β 相に変化する様子が観測された。
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