2025 年 16 巻 1 号 p. 16_1-16_6
本稿は,療法士の臨床研究開始にあたり,過去の非倫理的研究事例を背景に研究倫理の重要性と倫理審査委員会の役割を論じたものである。ナチスドイツや731部隊,タスキギー梅毒研究に見られる非倫理的行為を踏まえ,ヘルシンキ宣言とベルモント・レポートの倫理基準が確立された経緯,ならびに日本の倫理指針に基づく審査手続きや論理審査委員会の構成を概説した。さらに,研究計画の策定から審査,実施,終了報告に至るまでの手順,診療と研究の違い,症例報告の位置付け,研究不正防止,オーサーシップ問題に関する注意点を示した。これらに加え,健常成人ボランティアや社会的弱者を対象とする研究の倫理的配慮など研究者が直面しうる課題を整理し,継続的教育の重要性を強調した。併せて,施設外のe-learningなどを活用することで研究者が最新の倫理指針に基づき,安全かつ公正に臨床研究を遂行する方策を提言したものである。