本稿では,理学療法士の卒前教育と新生涯学習制度と当院での教育システムを融合した取り組みと,今後の展望をまとめた。近年,卒前教育の違いや,コロナ禍の影響で十分な臨床実習を経験できていないことなどで新入職員の能力はスタッフ間で様々であり,十分な指導や手助けが必要な新入職員が多いのが現状である。その為,当院では独自の患者レベル分け,チェックリストを用いながら個々のスタッフの成長スピードに合わせた教育システムを展開している。課題として,On the Job Training(以下OJT)を中心とした教育システムを導入しているが指導者を担う経験者数が少なく,一人の指導者に負担が多くかかる現状に陥っている。多くのスタッフに一定水準の卒後教育を提供し,安全に理学療法を提供することができる能力を担保するために当院の教育システムと新生涯学習制度の融合は必要であると考える。
【目的】歩行可能な慢性期脳卒中片麻痺者を対象に機能訓練事業の利用前後における歩行能力と移動範囲の変化について後方視的に検討した。【方法】対象は2018年4月1日から2021年3月31日までに施設入所支援で機能訓練事業を利用した慢性期脳卒中片麻痺者72名のうち,選択基準を満たした52名を対象にした。機能訓練事業の利用開始時と終了時の計測データを後方視的に調査した。評価項目は10m歩行テスト,Timed Up and GO test(以下,TUG),改訂版実用的歩行能力分類を使用した。【結果】歩行速度とTUG,改訂版実用的歩行能力分類は入園時と退園時で有意な差が認められた。【結論】機能訓練事業の利用前後で歩行能力と移動範囲が有意に改善された。慢性期脳卒中片麻痺者が障害者支援施設の施設入所支援で機能訓練事業を利用することで,歩行能力が向上し,移動範囲が拡大する可能性がある。