理学療法の科学と研究
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特集論文
  • 深田 亮, 辻󠄀 亮介, 花岡 英紀, 古矢 丈雄, 村田 淳
    2025 年16 巻1 号 p. 16_1-16_6
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は,療法士の臨床研究開始にあたり,過去の非倫理的研究事例を背景に研究倫理の重要性と倫理審査委員会の役割を論じたものである。ナチスドイツや731部隊,タスキギー梅毒研究に見られる非倫理的行為を踏まえ,ヘルシンキ宣言とベルモント・レポートの倫理基準が確立された経緯,ならびに日本の倫理指針に基づく審査手続きや論理審査委員会の構成を概説した。さらに,研究計画の策定から審査,実施,終了報告に至るまでの手順,診療と研究の違い,症例報告の位置付け,研究不正防止,オーサーシップ問題に関する注意点を示した。これらに加え,健常成人ボランティアや社会的弱者を対象とする研究の倫理的配慮など研究者が直面しうる課題を整理し,継続的教育の重要性を強調した。併せて,施設外のe-learningなどを活用することで研究者が最新の倫理指針に基づき,安全かつ公正に臨床研究を遂行する方策を提言したものである。

  • -倫理的課題とグレーゾーン縮小への道-
    桑江 豊
    2025 年16 巻1 号 p. 16_7-16_11
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     リハビリテーション領域では,運動機能や日常生活活動の向上を目指し,生成AIのような最先端技術を導入する動きが加速している。生成AIがもたらすメリットとして,自動プログラム作成やバーチャルコーチング,臨床文書作成支援などが挙げられ,患者支援の効率化や品質向上が期待される。しかし一方で,学習データの偏りに起因するバイアス,アルゴリズムの不透明性による説明責任の不明確化,過度なAI依存による患者の自律尊重の損失といった深刻な倫理的課題が指摘される。こうした課題に対処するためには,データプライバシー保護やバイアス検証を含めた包括的なガイドラインの整備,患者・臨床家・開発者・政策立案者など多職種・多分野の協働によるリスクマネジメント,組織レベルでの誤用防止・利用状況モニタリングなどが不可欠である。加えて,インフォームド・コンセントの充実やExplainable AI技術の導入を通じ,患者・医療者双方がAIの限界と責任分担を正しく理解する仕組みを構築することが望ましい。

研究論文
  • 原田 裕輔, 澤野 純平, 小出 直
    2025 年16 巻1 号 p. 16_13-16_22
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】理学療法士が当事者となった医療事故とヒヤリ・ハットの事例から,発生場所,発生時間帯,発生要因別にテキストマイニング手法を用いて探索的に分析し,傾向を明らかとすることである。【方法】対象は,日本医療機能評価機構に登録されている医療事故・ヒヤリ・ハット事例で,理学療法士が当事者として登録されているものとし,方法はテキストマイニング手法とした。【結果】自己組織化マップの結果,5つのクラスターが形成され,クラスターに出現した特徴語をコーディングルールに加え,各クラスターと発生場所,発生時間帯,発生要因ごとに共起分析を行い,発生場所は病室や機能訓練室,廊下が抽出され,発生時間帯は10:00~15:59,発生要因は判断の誤りや確認を怠った,知識が不足していた,技術・手技が未熟だったが抽出された。【結論】医療事故・ヒヤリ・ハット事例における一定の傾向が抽出された。

  • 柳沼 駿太, 竹内 真太, 西田 裕介
    2025 年16 巻1 号 p. 16_23-16_28
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】本研究では近赤外線分光法(Near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた骨格筋酸素利用能評価の信頼性を検討した。【方法】健常成人男性14名を対象とし,左外側広筋における組織中の酸素化ヘモグロビン量(oxy Hb量)の変化を計測した。測定データから安静時oxy Hb量,安静時における動脈阻血後のoxy Hb減少率(以下,安静時減少率),運動後における動脈阻血後のoxy Hb減少率(以下,運動後減少率)を算出した。各2回のデータよりBland-Altman分析及び級内相関係数としてICC case1 を算出した。【結果】安静時oxy Hb量および運動後減少率で系統誤差は生じていなかったが,安静時減少率は固定誤差が存在した。ICC(1,1)では安静時oxy Hb量0.007,安静時減少率0.405,運動後減少率0.7であった。【結論】運動後減少率において高い信頼性が得られた。

  • 谷川 竣祐, 宇佐 英幸, 平尾 利行, 妹尾 賢和, 齋藤 彰誉, 髙濱 杏丞, 尾野 友宏, 佐東 慎吾, 山本 圭吾, 納所 佳令
    2025 年16 巻1 号 p. 16_29-16_35
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:以下,THA)術後早期では歩行時痛が残存しており日常生活動作に影響が出る患者も多く存在する。本研究の目的はTHA術後早期の歩行時痛に関連する身体所見を探索的に調べることである。【方法】対象は片側THAを施行した女性患者100名とした。従属変数を術後5日目の歩行時痛 visual analogue scale(以下,VAS),独立変数を股関節可動域(range of motion:以下,ROM)の屈曲・外転・内転,腹臥位における踵殿距離(heel-to-buttock distance:以下,HBD),術前後の大腿周径差,膝伸展筋力(N/㎏)とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。【結果】HBD(B=0.46)が抽出された。【結論】股関節前方の硬さがHBDとして結果に示されたと考えるが,大腿直筋の硬さや創部の炎症反応の影響を受けていると推察する。

  • 内之倉 真大, 平野 正広, 関口 貴博, 宮内 秀徳, 加藤 宗規
    2025 年16 巻1 号 p. 16_37-16_42
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】体幹または骨盤の回旋位保持における膝関節回旋の特徴を明らかにする。【方法】健常成人女性9名18膝を対象に,三次元動作解析にて体幹あるいは骨盤を回旋位保持した際の膝関節回旋(水平面上の大腿骨と脛骨がなす角度)を測定した。基本姿勢は体幹正中位,両側膝関節30°屈曲位とし,足幅は身長の10%と20%の2条件とした。回旋条件は全例左回旋とし,体幹10°,20°,骨盤10°,20°回旋の4条件とした。基本姿勢からの姿勢条件(足幅×回旋条件)の変化量について左右の膝関節でそれぞれ二元配置分散分析を実施した。【結果】左右膝共に回旋条件による有意な主効果を認め,下位検定にて,体幹回旋より骨盤回旋の方が有意に大きな膝関節回旋がみられた。【結論】体幹または骨盤の回旋位保持における膝関節回旋の変化量は,体幹回旋よりも骨盤回旋の方が大きく,骨盤左回旋は右膝関節を外旋に,左膝関節を内旋方向に変化を示した。

短報
  • 単一施設観察研究
    井上 志帆, 齋藤 洋, 清水 堂弘, 太田 幸將, 杉村 裕志, 宮越 浩一
    2025 年16 巻1 号 p. 16_43-16_47
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】肺癌術後患者のBioelectrical impedance analysis (BIA) で測定した骨格筋量低下が予後不良と関連するかを明らかにすること。【方法】対象は当院で手術を受けた肺癌患者である。主要アウトカムは全死亡とした。骨格筋量は,BIAで測定した四肢骨格筋量を身長2乗で除して骨格筋指数 (skeletal muscle mass index, SMI) を算出した。骨格筋量低下の定義は,Asian Working Group for Sarcopenia (AWGS)のカットオフ値を利用し,カットオフ値未満をSMI低値群とした。SMI正常群とSMI低値群に関する死亡率を比較した。【結果】本研究の対象者は264名であった。年齢の中央値と四分位は71 [63-75] 歳で男性が172名 (65.2%)であった。追跡期間の中央値は1399 [1094-1881] 日で,36名 (13.6%) に全死亡を認めた。カプランマイヤー解析にてSMI低値群は死亡率が高値であった (log rank検定,p<0.001)。多変量COX回帰分析において退院時SMI低値群はハザード比3.71 [95%信頼区間:1.80-7.65,p<0.001] 有意に死亡率が高かった。【考察】肺癌術後患者における退院時の骨格筋量低下は予後不良と関連する可能性が示された。

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