理学療法の科学と研究
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特集論文
  • 小林 好信, 藤井 顕, 竹内 弥彦
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_1-14_5
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     2022年度より,新たな生涯学習制度が開始となった。登録理学療法士制度が開始となり,新卒会員は5年間をかけてジェネラリストとして登録理学療法士の取得を目指すことになる。登録理学療法士は5年更新制となり,今後理学療法士はジェネラリストとしての資質を兼ね備えた上で専門性を発揮することが求められることになる。新たな試みとして,後期研修の症例検討会や登録理学療法士の更新ポイントが取得できる更新研修会は,士会の承認があれば今後は自施設での開催も可能である。これにより,登録理学療法士自身が計画的に更新ポイントを取得することや,施設代表者は自施設に適した教育制度の確立が可能となり,生涯学習を行う上で前制度より自由度の高い制度となっている。今後,どのようなキャリアパスを選択していくか,理学療法士1人1人にその判断が委ねられている。そのために,まずは現制度について理解を深めていただきたい。

  • 鵜澤 𠮷宏, 村永 信吾
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_7-14_12
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     日本理学療法士協会の生涯学習制度が改訂され理学療法士の質の維持・向上,多様な障害像に対応できる能力の育成が提示された。『質』をどのように考えるかにより教育計画が異なる。当院では個々のセラピストが実施する業務(診療含む)のバラツキを抑えながら計画を実施し,結果を定期的に確認してニーズとの差を継続的に改善するというPDCAサイクルに基づいた業務を提供することが患者や社会の満足の得られる質の高い医療と考えている。具体的な卒後教育の内容としては,多様な障害像に対応できる能力を育成するためのローテーションシステム専門職としての考え方・プロセス(E-PDCA)を習得するための症例報告などの実施,根拠に基づいた実践(EBP)の学習などがある。そして患者や社会に信頼を得るにふさわしい態度/価値観/判断を伴った行動をとるためには知識やテクニックの上達だけではなくプロフェッショナリズムの理解を図っていくことになる。

  • 三浦 創
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_13-14_20
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     医療法人社団輝生会の理学療法部門では,「離床(基本動作)と移動(歩行)に責任を持ち,地域でその人らしい生活を支えよう」をスローガンに,より安全で質の高い理学療法サービスを提供できることにより,国民に高水準の理学療法を提供できる理学療法士の集団となることを目指し,教育研修に力を入れて取り組んできた。2022年4月から,日本理学療法士協会による生涯学習制度が大幅に変更され,職場内で実践している教育研修が一定の条件を満たすことでポイント付与の対象となり得る様な制度となった。双方の教育制度が目指すことのうち,学習の継続と理学療法士としての質の保証は大きく重なる部分である。それゆえ,2つを融合することで,場合によっては自施設の教育研修の質向上にも繋がる可能性がある。

  • 深江 航也, 高原 剛, 石渡 正浩
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_21-14_25
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿では,理学療法士の卒前教育と新生涯学習制度と当院での教育システムを融合した取り組みと,今後の展望をまとめた。近年,卒前教育の違いや,コロナ禍の影響で十分な臨床実習を経験できていないことなどで新入職員の能力はスタッフ間で様々であり,十分な指導や手助けが必要な新入職員が多いのが現状である。その為,当院では独自の患者レベル分け,チェックリストを用いながら個々のスタッフの成長スピードに合わせた教育システムを展開している。課題として,On the Job Training(以下OJT)を中心とした教育システムを導入しているが指導者を担う経験者数が少なく,一人の指導者に負担が多くかかる現状に陥っている。多くのスタッフに一定水準の卒後教育を提供し,安全に理学療法を提供することができる能力を担保するために当院の教育システムと新生涯学習制度の融合は必要であると考える。

  • 矢部 綾子, 橋本 典, 和田 雄太郎, 安彦 和星
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_27-14_32
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿では,社会情勢の急激な変化や多様化するニーズに応えうる理学療法士の育成にあたり,当法人での卒後教育や人材育成への取り組みについて紹介した。当法人の育成体制の主な特徴として,「学術支援制度」と「ジョブローテーション制度」の整備や,人材育成実践領域として「医療分野」,「介護分野」「地域貢献活動」,「新規プロジェクト」の4つを主要なものとして位置づけ,これらに注力している。医療・介護分野における卒後教育では,日本理学療法士協会の前期・後期研修システムを活用かつ実践内容の補完を図りながら,若手理学療法士の育成に取り組んでいる。今後,社会の多様化・複雑化が加速するなかで,我々への職域拡充や新たな価値の提供が同時に強く求められ,理学療法士としての質の高い専門性を基盤とし,新たな分野・領域への取り組みは必須であると考える。

研究論文
  • 小針 友義, 篠原 正倫, 寺内 勲, 池田 由美
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_33-14_40
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】歩行可能な慢性期脳卒中片麻痺者を対象に機能訓練事業の利用前後における歩行能力と移動範囲の変化について後方視的に検討した。【方法】対象は2018年4月1日から2021年3月31日までに施設入所支援で機能訓練事業を利用した慢性期脳卒中片麻痺者72名のうち,選択基準を満たした52名を対象にした。機能訓練事業の利用開始時と終了時の計測データを後方視的に調査した。評価項目は10m歩行テスト,Timed Up and GO test(以下,TUG),改訂版実用的歩行能力分類を使用した。【結果】歩行速度とTUG,改訂版実用的歩行能力分類は入園時と退園時で有意な差が認められた。【結論】機能訓練事業の利用前後で歩行能力と移動範囲が有意に改善された。慢性期脳卒中片麻痺者が障害者支援施設の施設入所支援で機能訓練事業を利用することで,歩行能力が向上し,移動範囲が拡大する可能性がある。

  • 宮内 秀徳, 岩崎 航, 金子 翔, 二瓶 好人, 澤野 靖之, 高橋 謙二, 高橋 憲正
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_41-14_46
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】本研究目的は肩関節水平屈曲,内旋可動域に与えるRadial Pressure Wave(以下,RPW)とストレッチの即時的効果を比較検討することである。【方法】対象は健常成人男性43名,肩関節後方構成体,および筋に対してRPWのみを施行するRPW群(15例),スリーパーストレッチのみを施行するST群(14例),RPWとスリーパーストレッチを施行するMIX群(14例)に分類した。調査項目は肩関節外転位内旋,肩関節屈曲位内旋,肩関節水平屈曲,結帯動作とし,施行の前後に測定を行い,変化量を3群で比較した。【結果】肩関節屈曲位内旋,肩関節水平屈曲で主効果を認めた。下位検定において肩関節屈曲位内旋でST群に比べRPW群,MIX群が有意に高値を示した。肩関節水平屈曲ではST群に比べMIX群が有意に高値を示した。【結論】肩関節可動域の即時的な拡大に,RPWとストレッチの併用が有用である可能性がある。

  • -サルコペニアのスクリーニング開発に向けた予備的研究-
    里村 茉純, 山中 英士, 井上 靖悟, 辻川 将弘, 近藤 国嗣, 川上 途行
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_47-14_51
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】回復期病棟に入院する脳卒中患者の入院時頭部CT画像を用いた咬筋横断面積測定の信頼性と麻痺側・非麻痺側で咬筋横断面積に差があるか検討すること。【方法】当院回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者16名を対象とした。理学療法士3名が独立して咬筋横断面積を測定した。検者内信頼性および検者間信頼性を級内相関係数(intraclass correlation coefficient:ICC)を用いて検討した。麻痺側と非麻痺側の咬筋横断面積の比較は対応のあるt検定を用いた。【結果】咬筋横断面積の検者内信頼性はICC(1,1)で0.990(95%信頼区間0.972-0.996,p<0.05),検者間信頼性はICC(2,1)で0.988(95%信頼区間0.973-0.995,p<0.05)であった。麻痺側と非麻痺側の咬筋横断面積に有意差を認めなかった(p=0.72)。【結論】頭部CT画像を用いた咬筋横断面積の測定は検者内・間ともに高い信頼性を認めた。

症例研究
  • 鈴木 岬, 加藤 邦大, 郷田 悠, 丹下 拓海, 来間 弘展
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_53-14_56
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】前十字靭帯再建術後に膝前部痛(Anterior knee pain:AKP)が発生した症例において良好な成績を得たため報告する。【方法】症例は,アイスホッケー中に受傷した右前十字靭帯断裂に対し,再建術を施行した20代男性である。術後6か月でランニングを再開した際にAKPが発生した。片脚スクワットで同部位に疼痛が出現し,大腿外旋と下腿内旋を誘導すると疼痛は軽減した。股関節制御機能低下,大腿筋膜張筋の過緊張,中殿筋後部線維の出力低下が大腿内旋と下腿外旋を引き起こし,AKPが生じていると考え,介入した。特に大きな問題点であった股関節制御機能に対して,鏡を用いて修正を試みた。【結果】介入後5週で45分以上疼痛無くランニングが可能となり,術後1年で競技復帰となった。【結論】前十字靭帯再建術後に生じたAKPにおいて,動作の観点から評価し,介入することが必要であると考えた。

  • 稲葉 長彦
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_57-14_61
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】結帯動作は運動時痛や可動域制限があることで困難となってしまう。今回,肩の機能解剖を意識して徒手操作を行ったことで,改善に繋がった一症例を経験したので報告する。【方法】肩関節周囲炎を伴い,結帯動作制限となった50歳代女性に対して運動療法を実施した。3カ月後,肩周囲の痛みが残存していたために理学療法内容を再度検討した。動作時,上腕骨頭が前方変位していたために求心位を取れるように,棘下筋を介した周囲組織に対して徒手操作を加えた運動療法を行った。【結果】初期評価で結帯動作第5腰椎レベルだったが,最終評価で第4胸椎レベルまで痛み無く可能となった。【結論】今回,肩峰下や肩峰角など特定の部位を意識した介入や肩の求心位を保ちながらの操作により改善に至った。肩疾患患者の運動時痛に対して,肩の機能解剖をより重視し,徒手の細かい治療操作が有効であったと考えられた。

症例報告
  • 須長 源生, 佐藤 俊彦
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_63-14_66
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】嚥下障害を有する肺炎患者に対し舌骨上筋筋力増強を目的に顎引き抵抗運動を実施し効果を前後評価した。【方法】誤嚥予防を目的に背臥位・車いす上での顎引き抵抗運動と誤嚥予防のために全身的アプローチを入院時の7日間実施した。【結果】舌骨上筋群の筋力増強は認めなかったが,舌骨上筋群の収縮時間が延長した。また,頸部筋緊張の軽減と座位アライメントの改善を認めた。【結論】今回の結果から,顎引き抵抗運動は舌骨上筋群の促通に効果があると考えられるが食形態の向上に至らなかった。今後,食形態の向上につながるさらなる嚥下機能評価および訓練の検討が必要であると考えられる。

調査報告
  • 島田 総司, 川村 雄輔, 大杉 紘徳, 髙原 剛, 海沼 美弥子, 川村 知里, 高梨 敏弘, 栗原 靖
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_67-14_72
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】山武長生夷隅ブロックの理学療法士所属施設と自治体との連携状況把握,地域リハビリテーション活動(体操教室・住民向け講習会・地域ケア個別会議等を指す。以下,地域リハ活動)の課題整理,活動に対する取り組みの地域差の検証を目的とした。【方法】当ブロック内施設に所属する理学療法士(責任者向け・会員向け)を対象にアンケート調査を行った。単純集計とクロス集計を用いて,地域リハ活動の内容把握や課題整理などを行った。【結果】アンケート回答率は,責任者31名(70.4%),会員130名(44.2%)であった。課題として地域の問題点が把握出来ない,自治体とのやり取りが上手くいかない,人手不足が挙がった。活動の地域差として山武地域では,他の地域と比較して協働なしと回答した施設が多かった。【結論】地域リハ活動の情報収集と共有,連携状況の再確認,人材の需要と供給のミスマッチ改善などの必要性が示唆された。

  • -テキストマイニングの手法を用いた分析-
    鈴木 善雄
    2023 年 14 巻 1 号 p. 14_73-14_79
    発行日: 2023/03/24
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】千葉県自治体が策定する介護保険事業(支援)計画における「リハビリテーション」や「リハビリ専門職」といった語句の出現率や出現箇所等の特徴について,近年の傾向を計量的に明らかにすることを目的とした。【方法】対象は県および一定の条件で選出した県内の基礎自治体(計10自治体)において策定された高齢者保健福祉計画と介護保険事業計画のテキストデータとし,直近2期計画を比較した。分析はKH Coder 3 windows版を用い,テキストマイニングの手法で実施した。【結果】語句「リハビリテーション」「リハビリ専門職」「理学療法士」「作業療法士」「住民主体」「自立支援」の出現率が,半数以上の自治体で増加していた。また「地域」や「助言」「提案」「通いの場」「自宅」と同じ文脈で用いられていた。【結論】リハビリテーションに関連する語句の出現率は増加傾向にあり,リハビリテーション専門職に求められる役割が多様化していることが示唆された。

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