科学・技術研究
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短報
統計的手法を用いた東北地方4市の産業集積構造と付加価値額および雇用者数の関係指標に関する研究
遠藤 正人野田 博行
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2023 年 12 巻 2 号 p. 161-169

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抄録
本研究では、東北地方4市(米沢市、郡山市、いわき市、会津若松市)の産業集積構造について、各業種の生産性の指標である付加価値額および税収と消費に関係する指標である雇用者数とそれらの総計との関係から統計的に検討した。工業統計は、経済産業省のホームページから入手し、統計解析はエクセルにより行った。各業種の付加価値額および雇用者数とそれらの総計との相関係数および既報の各業種の規模を表す工業製造品出荷額とその総計との相関係数から以下のことが明らかとなった。各指標の総計のトレンドが増加傾向、すなわち、成長過程の場合、業種の相関係数が+0.3以上で有意であれば増加傾向で成長過程、–0.3以下で有意であれば減少傾向で衰退過程である。業種の相関係数が0に近い場合は、トレンドの増減がなく停滞過程である。一方、各指標の総計のトレンドが減少傾向、すなわち、衰退過程の場合、業種の相関係数が+0.3以上で有意であれば減少傾向で衰退過程、–0.3以下で有意であれば増加傾向で成長過程である。業種の相関係数が0に近い場合は、トレンドの増減がなく停滞過程である。また、各指標の総計トレンドの増減が小さい、すなわち、停滞過程の場合、業種の相関係数も0に近くなるが、増加傾向でも減少傾向でも0に近くなる。以上の結果から、地域の産業集積構造の業種転換時期は、成長過程でも衰退過程でも業種の各総計に対する相関係数は負に振れると考えられる。したがって、本研究の手法は、業種ごとの工業製造品出荷額、付加価値額、雇用者数とそれらの総計との相関係数を指標とすることにより、簡便に、地域産業の成長、停滞、衰退過程が評価できるため、産業集積構造の再構築を検討する上で、重要な示唆を与え、かつ、極めて有用であると考えられる。
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