科学・技術研究
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原著
アメリカにおける化学物質管理法改革の行方・補遺
第114回連邦議会における2つのTSCA改正法案をめぐって
赤渕 芳宏
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2016 年 5 巻 1 号 p. 67-92

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抄録
本稿は、アメリカ合衆国における化学物質管理法改革の近時の動向につき、「有害物質規制法」(Toxic Substances Control Act(TSCA))の最近の改正法案のうち、連邦議会の第114回議会(2015年1月より)においてそれぞれ上院・下院を通過した2つの法案を取り上げ、その内容を紹介し、若干の検討を加える。化学物質管理法においては、かねてより、①規律対象とすべき化学物質の同定に必要なリスク情報の生成・収集、および②化学物質のリスクの管理、をいかに進めていくかが、わが国やアメリカのみならず各国において課題とされてきた。①については、とくに、既存化学物質に関するリスク情報を、リスク管理者たる政府がいかなる法的手立てを用いて収集するか、およびリスク情報の生成に要する費用を誰が負担するかが、また②については、①の作業を通じてもなお科学的不確実性が残る化学物質につき、そのリスク管理をいずれの主体がいかなる手立てを用いて行うか、が問題となる。TSCA改正をめぐる議論は最近になりようやく成熟を迎え、改正の実現を目前としているが、本稿は、化学物質管理法の比較法的考察のための前提作業として、最近のTSCA改正法案がこれらの点につきどのような対応を図ろうとしているかに焦点をあてて検討を行う。
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