抄録
阪神大震災・東日本大震災はともに、市民全体がインパーシャルに被害を受けたわけではなく、平時からヴァルネラブルな障害者(や高齢者等)において、非日常時に、震災以前からの生活上の困難が顕在化し、「震災弱者」化したという点で、共通点を有する。それは、阪神大震災時の教訓が東日本大震災時に活きていなかったということをも意味する。被災障害者における社会的被害の重層化は、①安否確認からの漏れ、情報へのアクセス閉鎖、②避難所・仮設住宅などの物的環境面のバリア、③介助の不足、④「震災弱者」への特別の配慮を行わない「一律『平等』主義」と、独力での生活が困難な障害者に対する「施設・病院収容主義」、⑤避難所等での排除的対応、⑥復興格差。被災障害者は、障害者団体のネットワークを活用したピア・サポートを行う一方で、生活再建・自立に向けた取り組みを、ボランティア/NPOとの「支え合い」において実践する。阪神大震災における「被災地障害者センター」の活動では、被災障害者の自己決定を核とした自立を支援する「支え合い」が展開されていった。また、東日本大震災における「ゆめ風基金」の活動では、個別支援、長期支援、地元優先、支援の担い手/サービスの利用者としての障害者の育成が支援のポイントである。非日常時の社会的被害を低減するための日常時からの取り組みとして、障害者と健常者の接点をつくることの重要性が挙げられる。