現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
音楽のコミュニケーションにおける内的時間とリズムをめぐる考察
シュッツ音楽論およびフッサール現象学からのアプローチ
寺前 典子
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 3 巻 p. 59-71

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抄録

本稿のねらいは、音楽のコミュニケーションの可能性を解明することにある。そして、その手段として、シュッツの音楽論で語られる「内的時間」および「リズム」を考察する。シュッツは「音楽の共同創造過程一ー社会関係の一研究一一」において、共同演奏がどのように可能になっているのかを論じた。そこでシュッツは、コミュニケーションには「われわれ」経験が欠かせず、この経験の基盤となっているのは「内的時間のうちで他者の諸経験の流れ」を共有することであると述べる。シュッツは、このように人間活動の深奥の層をとらえる現象学的探求に取り組んだが、「内的時間」については詳述しなかった。そこで本稿は、まずシュッツの議論をフッサールの知見で補強することにより「内的時間」の内実を論究する。また、諸個人の「内的時間」がどのように他者のそれと結びつくのか、シュッツは、その鍵となるのは「リズム」であることを他の論考で示唆した(Schutz 1996: 275)。本稿はその問いを引き継ぎ、楽曲の「リズム」を介した身体の同調関係の現象学的構造を明断化した。それは〈楽曲のリズム〉と〈生命現象のリズム〉との協働によって生じているのである。音楽のコミュニケーションは、「リズム」の協働そして「内的時間」に拡がる〈把持的意識の織物〉を他者と共有すること、これらを基に成立するのである。

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© 2009 日本社会学理論学会
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