抄録
J .ハーバーマスとA・ホネットはともに、「個体性の承認」という視点からミードの社会化論を再構成することで、従属性/主体性の軸に絡め取られ続けてきた社会化論を、実践的な領域へと拡張している。本稿では、こうした両者の論述をそれぞれ検討するとともに、比較を通して両者の論述の相違を明らかにすることを目的とする。両者とも、ミードの社会化論における「I」の創造的な投企のロジックを重視し、それによって形成される新たな「Me」において、各自の個体性が十全に承認されるとする。ハーバーマスは、この新たな「Me」を普遍的討議と解釈した上で、そこにおいて道徳や生活史の構成主体として受け入れられることを個体性の承認として把握する。ホネットは、新たな「Me」を「ポスト伝統的共同体」として概念化し、そこにおいて独自の業績的価値を持つ者として受け入れられることを、個体性の承認として把握する。こうした両者の論述の差異を踏まえることで、「個体性の承認」をアクチュアルなものにしていくための手がかりが得られる。