ファストフード・レストランのマクドナルドでは、利用者の無礼な振る舞いと、それを許容する周囲の無関心が共存する奇妙な光景が繰り広げられている。本稿では、場所性を喪失した「非場所」の代表であるマクドナルドにおいて発生する利用者の無礼と、その無礼を許容する「無礼の受け手」の無関心について考察する。
本稿で明らかにするのは、第一に、マクドナルド内では、利用者の抱く信頼の作用が活発化するという点である。利用者が抱く「システム信頼」の対象は、マクドナルドのサービスや店員の行動から、場を共有する他の利用者の行動へと拡大している。信頼の拡大適用が活発化する要因として、「予測可能性」が遍在化するマクドナルドの特徴と、過去の情報を過剰に利用する信頼の脆弱な構造的特徴との共振関係が挙げられる。
本稿で明らかにするのは、第二に、「無害化」という意識がマクドナルドの利用者の聞で発生している点である。マクドナルド内では、信頼の拡大適用を底流として活用しながら、他人の無礼な振る舞いを「予測可能性」に回収する「無害化」という意識が、利用者の中で発生している。
以上のように、利用者の「無害化」という意識が、マクドナルドで発生する無礼に付与された社会的意味を一時的に解除することにより、「無礼の受け手」は己の自尊心を防衛しているのである。
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