現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
ギデンズ「第三の道」における連帯概念の検討
能動的信頼の概念を中心に
檜山 和也
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 4 巻 p. 93-105

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抄録
本論文はギデンズの「第三の道」の背景にある連帯に関する構想を分析し、その問題性を検討することを狙いとしている。「第三の道」を代表とするワークフェア・モデルは、現在多くの先進諸国に普及している。その背景にあるのは、自尊心へのダメージを伴う社会的排除の問題の認識であり、そして旧来の福祉国家がそうした排除に対し有効性を持たないこと、それに代わり諸個人に対する自律の支援が連帯の再建(社会的包摂)に結びつくという想定である。しかし問題は、そうした理念がしばしば過度な責任や義務の強調を伴うことにある。本稿ではそこから、ギデンズの「第三の道」の背景にある、近代から現在に至る社会的連帯の変化に関する彼の分析を検討した。大まかに言えば、近代においてはヒエラルヒー的な管理を行うシステムへの信頼が統合を支えてきたのに対し、そうしたシステムへの信頼がリスク化やグローバル化といった変化に伴って動揺するにつれ、逆に諸個人の自発的なコミットメントに基礎を置く信頼が、新たな連帯の原理として要請されるに至ったということである。こうした診断を整理しつつ、その問題として、それが諸個人に過剰な負荷を及ぼすだけでなく、問題ある諸個人を道徳的に排斥することにつながることを指摘した。その上で、現状の問題を主体や自律といった近代的理念にあるとする主張に対し、問題は連帯のあり方にあることを指摘した。
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© 2010 日本社会学理論学会
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