現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
社会学と実証すること
コント、J. S.ミル、アドルノ、ポパー
早川 洋行
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 9 巻 p. 28-40

詳細
抄録
今日、実証データを示すことは、学問の世界のみならず世間一般でも重要視されている。しかし、実証すること自体が価値を帯びたり、データが捏造される事件も起きている。本稿はそうした現状を踏まえて、社会学史における実証研究に関する議論を整理し、社会学研究(社会学者)と「実証すること」の関係について考察したものである。
コントは、社会学は形而上学的段階から実証的段階に進化すべきだと考えていた。その際、重視されるのは何より「観察」だった。J. S. ミルはコントの主張に対して、概念が客観的世界から遊離してしまう点と、眼に見えない心理的なものの観察方法が示されていない点を批判した。またドイツ実証主義論争において、アドルノは、内容に対する方法の優位、方法の多様性による社会の全体性の解体、イデオロギー化を指摘するとともに、哲学の復権を主張し、一方、ポパーは、主観による観察の構築を指摘して、批判的合理主義を主張した。
以上4人の議論を見田宗介が用いた言葉を再定義して整理すれば、「引出されたデータ」に固執する問題、「引出されたデータ」「見出されたデータ」「未知のデータ」の関係の問題、「引出されたデータ」の恣意性の問題に整理できる。結論として、社会学者は「見出されたデータ」の世界に身を置きつつ、「引出されたデータ」と「未知のデータ」に関心を保ち続けることが大切であると主張する。
著者関連情報
© 2015 日本社会学理論学会
前の記事 次の記事
feedback
Top