現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
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9 巻
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  • 実証主義の功罪
    草柳 千早
    2015 年 9 巻 p. 1-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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  • 仮説確認の批判的検討
    栗田 宣義
    2015 年 9 巻 p. 3-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿の目的は、経験科学としての計量社会学に固有かつ内在する諸視角から仮説確認の批判的検討を試み、簡明な数式と初歩的な手順のみを用いて、その陥穽について具体的に論じることである。その第一は、近似式導出の誤謬、第二は、全変動に占める僅少な割合に過ぎない説明力の低さ、第三は、木を見て森を見ずに陥る妥当性を欠いた理論モデルだ。推測統計の過信に起因する、かくのごとき陥穽の克服無しには、社会学における一般理論は成し難い。
  • 社会修辞学への道程
    犬飼 裕一
    2015 年 9 巻 p. 14-27
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    科学をめぐる語りは、社会学においても決定的な役割を果たしてきた。「社会」について科学的に語ることは長年にわたって重視されてきた。ただし、社会について語る社会科学者自身については多く語られてこなかった。「社会科学者」は、しばしば透明な存在であり、「社会」から距離を取って「客観的」な立場で論じていると主張してきた。本稿の課題は、その種の「語り」や「主張」を自己言及として問い直すことである。それは「客観性」を自称しながら、実際には「社会」に対して大きな影響を及ぼしている社会科学の現状を、問い直すことでもある。「社会」について論じる当人はどうなのか。自己言及的に問うことによって、自己言及を排した「科学」とは異なった形の議論が可能になる。ただし、それはたんなる暴露学ではない。むしろ、問題は社会科学全般について、それが「社会」に対して果たしうる役割について問い直すことに向かう。それは社会についての「語り」そのものを主題とする社会修辞学なのである。
  • コント、J. S.ミル、アドルノ、ポパー
    早川 洋行
    2015 年 9 巻 p. 28-40
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    今日、実証データを示すことは、学問の世界のみならず世間一般でも重要視されている。しかし、実証すること自体が価値を帯びたり、データが捏造される事件も起きている。本稿はそうした現状を踏まえて、社会学史における実証研究に関する議論を整理し、社会学研究(社会学者)と「実証すること」の関係について考察したものである。
    コントは、社会学は形而上学的段階から実証的段階に進化すべきだと考えていた。その際、重視されるのは何より「観察」だった。J. S. ミルはコントの主張に対して、概念が客観的世界から遊離してしまう点と、眼に見えない心理的なものの観察方法が示されていない点を批判した。またドイツ実証主義論争において、アドルノは、内容に対する方法の優位、方法の多様性による社会の全体性の解体、イデオロギー化を指摘するとともに、哲学の復権を主張し、一方、ポパーは、主観による観察の構築を指摘して、批判的合理主義を主張した。
    以上4人の議論を見田宗介が用いた言葉を再定義して整理すれば、「引出されたデータ」に固執する問題、「引出されたデータ」「見出されたデータ」「未知のデータ」の関係の問題、「引出されたデータ」の恣意性の問題に整理できる。結論として、社会学者は「見出されたデータ」の世界に身を置きつつ、「引出されたデータ」と「未知のデータ」に関心を保ち続けることが大切であると主張する。
  • 反優生思想と健常主義批判の比較から
    石島 健太郎
    2015 年 9 巻 p. 41-53
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿の目的は、堀智久によって日本の障害学の固有性を規定するものとして提出された反優生思想と、欧米の障害学を中心に議論されている健常主義Ableism批判を比較することによって、前者の性質を精緻に理解すると同時に、障害学の存立基盤がいかなるものであるべきかを議論することにある。
    本稿は反優生思想と、健常主義批判の議論を概観した上でこれらを比較し、これらが障害の社会モデルの難点を克服するという点で共通するものの、ある一点で決定的に異なることを示す。それは、障害者/健常者というカテゴリーを維持するか否かという点である。すなわち、反優生思想を基盤とする障害学は、その他のマイノリティとは質的に異なるものとしての障害に定位して学を展開できる一方で、障害者の産出プロセスや、人々を序列づける機制を疑えない。逆に健常主義批判を基盤とする障害学は、そうした人々を障害者や健常者として分ける仕組みを根底から批判できる一方、この社会で不利益を被る他のマイノリティと障害者との差異に鈍感になってしまう。
    こうした一長一短を踏まえた上で、本稿は健常主義批判の方が障害学の基本的視角として有効であると考えるが、一方で本稿は反優生思想の障害者運動や相互行為場面における実践的有効性を認める。ゆえに、学と運動がそれぞれ、健常性を相対化していくという共通の基盤の上に連動していくことがポスト社会モデルの障害学のあり方として提示される。
  • 人称代名詞の観点から
    廣田 拓
    2015 年 9 巻 p. 54-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、イギリスの社会学者A・ギデンズのモダニティ論で言及されている、専門家と非専門家の出会いの場を意味する、「アクセス・ポイント」という概念を検討する一論考である。アクセス・ポイントとは、モダニティを生きる人々が、特定のコンテクストを共有する(専門家などの)集団に所属すると同時に、そこを離れたところでは一般人として生活しているという両義性が顕在化する場でもある。本稿ではこのことを、自他の対面的/非対面的相互行為に現れる人称代名詞の観点から議論している。対面的な相互行為において、自他はともに双方の呼びかけに応答する〈あなた〉として現れると同時に、この関係性は相互了解的な〈ワレワレ〉性を帯びている。他方、各種マス・メディアなどを利用した非対面的な相互行為において、自己は他者を〈彼/彼女〉として対象化する一方で、この他者にとって、自己はその他大勢の中の一人として〈ヒトビト=大衆〉性を帯びて現れる。ギデンズのアクセス・ポイント概念は、こうした〈私〉の中に含まれる〈ワレワレ〉性と〈ヒトビト〉性を結びつける接合点としての意味をもつ。モダニティを生きる諸個人の実存的不安は、その実存の無根拠性を露わにする〈ヒトビト〉性を解消するべく〈ワレワレ〉性に人々を接近させる。ギデンズの議論は、それがモダニティを生きる現実から目を逸らす結果となることに注意を喚起し、この問題を乗り越えるための概念を提示している。
  • J. バトラーにおける「倫理への転回」を手がかりとして
    髙橋 賢次
    2015 年 9 巻 p. 67-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、2000 年以降にJ. Butler が展開している「倫理」をめぐる思考に注目し、攪乱に主眼を置いた従来の議論の延長線上に理論的に位置づけることによって、Butlerのいう「他者との倫理的関係」のヴィジョンが持つ社会学的な含意を明らかにするものである。
    本稿ではまず、パフォーマティヴィティ概念を主軸とする攪乱の議論と、それに対する批判を概観する。Butlerの議論に通底しているのは、攪乱の契機に注目することによって、その社会的な条件を遡行的に問い直す志向性であり、2000 年以降の「普遍性」をめぐる解釈の転換や、「性」から「生」への重心の移動は、いずれも、こうした志向性のさらなる徹底によってもたらされたものと理解することができる。
    こうした志向性を読解の基軸に据えるとき、近年になって前景化した「倫理」の主題系もまた、従来の議論からの内的必然性をもった展開であることがわかる。とりわけ、こうした展開の背景には、Butler自身が従来の「倫理」理解を批判的に問い直していくプロセスがあった。このように本稿では、攪乱の議論から「倫理」の主題系に至るストーリーを理論的な視点から再構成することによって、「倫理」をめぐる議論を外的な政治・社会状況へと性急に結びつけるような批評的読解を相対化するとともに、「他者との倫理的関係」のヴィジョンが、既存の社会学的な記述の地平に問い直しを迫るものであることを論じる。
  • 愛着の経験からみる主体、対象、行為
    吹上 裕樹
    2015 年 9 巻 p. 81-93
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、音楽への愛着の経験について議論するものである。具体的には、人が音楽に対して愛着するとはどのような経験なのか、それはどのような条件において可能となり、どのように人間主体の行為や認識のあり方に影響するのかという問いを論じる。音楽をはじめとした文化的対象への愛着の問題は、文化や芸術を扱う社会学の議論において、これまで必ずしも正面から論じられてこなかった。とくに、ピエール・ブルデューに代表される従来の文化社会学の議論において、そうした問題は、構造的なメカニズムによって規定されるものとされてきた。これに対し、本稿では、主としてアントワーヌ・エニョンによるアマチュア音楽愛好家の研究を参照する中で、音楽への愛着を、対象と接する愛好家らの具体的な実践の中で生み出される予測できない効果であると考える。エニョンらの議論の検討に加えて、本稿では、愛着の経験が生み出される時間的プロセスの問題について論じる。こうした議論を通じて、対象への愛着が生み出される「生成する出来事」の特性を明らかにし、愛着の経験を記述するためのアプローチを提示することが目指される。
  • 太田 有子
    2015 年 9 巻 p. 94-104
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、これまでの社会学における国家概念をめぐる議論を検証するものである。同概念を精査することは、 現在、世界諸地域で国家の枠組の問い直しや再編の動きがあるなか、これらの動向の理解や今後のあり方を考える上で重要であると同時に、社会学の知の体系化とその背景を明らかにするという点においても意義があるといえる。
    社会学における国家概念をめぐる議論は、支配機構としての「国家」がその統治対象として「社会」を統治するといった両者を対置させる見解や、「国家」とその内部の共同体として「社会」を捉えることで両者を統一体として扱う見解が中心となってきた。こうした認識は、西欧地域における市民革命や国民国家の発達という特異な歴史経験に基づいて発展したことが背景にあるが、このことは同時に他時代、他地域の事例の理解や一般化に関しては議論を要することを示唆している。西欧の国民国家の歴史経験を規範化し、地域性を捨象した硬直的な国家概念は、他地域の歴史経験や現在の状況の理解を困難にしている。さらに社会の諸活動が国家の領域を超え、地球規模で展開している状況を鑑みると、国家概念もまた新たな分析枠組みで捉え直すことが必要とされている。
    本稿では、国家概念が社会学の成立・発展とどのように関わっていたか概観し、社会学がこれまで前提としてきた概念や理論の背後にある歴史性、地域性を改めて示すとともに、現代社会学における国家概念をめぐる議論を検証しつつ、今後の展望を考察する。
  • 1980年代と見田宗介
    片上 平二郎
    2015 年 9 巻 p. 105-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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    見田宗介の『宮沢賢治』は文学者に関する著作であり、また直接的に社会事象や社会学理論を扱った書物ではないこともあり、社会学者としての見田宗介の仕事の中では前面に出して論じられることは少ない。だが本論では、1990年代以降の見田宗介の思考の「転回」の萌芽を含むものとして、見田社会学の展開の中での『宮沢賢治』という著作の位置付けをとらえなおしてみたい。この作業は、文学を語るということが、社会学にどのような意味をもたらすことになるのかを考えることにもつながるものであるだろう。
    「近代社会」の内在的な価値分析からその思索を開始した見田宗介は徐々にその作業の力点を「近代」の批判や相対化に向けていく。だが、1990 年代後半以降は、人類史という観点から「現代」という時代のポテンシャルを再評価するに至っている。ここには、「現代」という時代に内在する「転回」の可能性を読み取ること、および、そのようなかたちで「現代」に対する評価を「転回」することというかたちで、見田社会学の中に二重の「現代社会」に対する態度の「転回」が生じている。本論文は、このような二重の「転回」を見田の思想の中にもたらしたものとしての『宮沢賢治』という書物の意味の再評価を試みる。“ゆたかさ”というものの意味を見田宗介はこの本の中で捉え返そうとしていた。
  • ルーマンのゼマンティク論を使いこなす
    赤堀 三郎
    2015 年 9 巻 p. 117-120
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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  • 樫村 志郎
    2015 年 9 巻 p. 121-129
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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  • 杉山 光信
    2015 年 9 巻 p. 130-135
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/03/09
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