西日本社会学会年報
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Print ISSN : 1348-155X
論文
在日韓国人僧侶の信者獲得過程
―僧侶・巫者・信者の三者関係に注目して―
吉田 全宏
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2019 年 17 巻 p. 75-88

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抄録

本論文では、在日韓国人僧侶が日本で信者を獲得する過程を巫者との関係から明らかにする。在日韓国人僧侶が日本で活動するためには自身の信者を獲得することが必要不可欠となるが、これは簡単なことではない。金銭的な動機から巫者の執行する儀礼を手伝う来日したての在日韓国人僧侶にとって、もっとも身近な一般信者は、儀礼で接触する巫者の信者である。しかし、巫者との良好な関係を維持するためには、巫者の信者を自らの信者に積極的に取り込むことは控えざるを得ない。だが、在日韓国人僧侶と巫者との金銭的主従関係が変容する過程で、こうした積極的な取り込みが実際に起こっている。こうした事態が示唆していることは、在日韓国人僧侶と巫者との間には「金銭的結合関係」だけでなく、「潜在的対抗関係を含んだ協働関係」が存在しているということである。在日韓国人僧侶の信者獲得過程として、巫者との関係の中で活動資金を得る一方、巫者の信者とも結合関係を構築し、最終的に自身の寺の建立や継承にいたる、そういう図式を描くことが可能である。

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© 2019 西日本社会学会
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