西日本社会学会年報
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チェサ離脱過程にみる在日朝鮮人の親族葛藤
木下 佳人
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2020 年 18 巻 p. 103-111

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抄録

本稿の目的は在日朝鮮人の親族葛藤が生じる要因を示すことである。長い間、差別や貧困は在日朝鮮人が抱える問題であり、これらの問題が広くみられる時代には、親族の相互扶助は彼らが生活する上で不可欠であった。一方、親族間に葛藤が生じることもあり、同居親族間の葛藤がこれまでも指摘されてきた。しかし、非同居親族間の葛藤を扱った研究は少ない。そこで、本稿では、ある在日朝鮮人家族の家族員が先祖祭祀から離脱する過程を分析し、非同居親族間の葛藤が生じる要因を示す。

調査の結果、親族葛藤が生じる背景には親族の経済格差が存在していたことが明らかとなった。また、親族葛藤によって経済格差が温存される側面もあり、親族葛藤と経済格差は相互規定関係にあることが分かった。この知見は、各親族の経済状況という着眼点が、在日朝鮮人の親族関係を分析する上で有益であることを示唆している。

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