抄録
宇宙科学研究所の観測ロケットS-520の姿勢制御への適用を前提に,適応型ノッチフィルターを利用した制御器を提案した.著者らは,動翼モジュールと呼ばれる円筒部を実際に試作し,ハードウェア試験を含む各種検証を実施している.本稿では主に,この動翼モジュールに実装された適応型ノッチフィルターを利用した制御器について論じた.
ロケットの動特性は本質的に時変系であるため,たとえば構造1次振動モードも時間とともに変化する.これを従来の時不変の線形制御器を用いて制御すると,振動モードの不確定性に対して十分な安定マージンを確保するためには応答性能を犠牲にせざるをえないケースがあった.それに対して,本稿では,励起された振動モードに自動的に適応していくノッチフィルターを定式化し,これと従来型の時不変制御器を組み合わせることを提案した.数値シミュレーションなどの結果,本提案の有用性が確認された.
著者らは提案した制御器を実フライトに供することができる試作品に実装済みである.本稿では,試作品を用いて実施した試験についても,一部論じた.