聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
間欠期意識清明な熱性けいれん群発で発症したが,その後意識変容をきたしHHV-6関連脳症の診断に至った一症例
古藤 優貴竹田 加奈子宮地 悠輔大山 亮山本 仁宮本 雄策
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2018 年 46 巻 2 号 p. 77-83

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抄録

Human herpesvirus 6(HHV-6)の初感染である突発性発疹症は,我が国ではほとんどの児が生後6ヶ月以降,多くは乳幼児期に罹患する感染症である。熱性けいれんが多く合併することが知られており,また脳炎・脳症の原因となることもある。今回我々は,熱性けいれん群発を生じた後,徐々に意識変容を認め,継時的に脳波を記録することで脳症の診断に至った症例を経験したため,ここに紹介する。
症例は成長発達歴に異常のない2歳の男児で主訴は全身性強直性けいれん発作であった。入院前に5回のけいれん群発を起こすも,発作間欠期の意識状態は清明であり,臨床検査所見や頭部CT,MRI検査において,入院時に異常は認められなかった。入院時の脳波所見では,正常の睡眠時波形も認めるが後頭部優位の局在性徐波の混入を認めた。入院し約8時間後に意識障害が出現し,再検した脳波で全般性に徐波を認めたことから,脳症の診断でステロイドパルス療法を開始した。開始翌日には意識障害が改善した。川崎市衛生研究所よりPCRで血液よりHHV-6が検出され,本症をHHV-6関連脳症と診断した。第6病日に脳波検査と頭部MRIを再施行したが異常所見は認めず,神経学的異常所見なく経過し第12病日に退院した。
本症例では,けいれん間欠期の意識状態は清明であったが,繰り返す全身性けいれん発作が出現し,次第に意識状態の変容を認めたことから,脳症の診断に至った。初期のけいれん間欠期が意識清明であっても,継時的に意識状態を観察していくことが,早期診断および治療開始に重要である。

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© 2018 聖マリアンナ医科大学医学会
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