聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
培養表皮の色素調節技術の開発
整容的応用のための基礎的検討
武内 嵩幸梶川 明義住江 玲奈鍋島 諒太宮野 竜太朗市田 美緒舘下 亨井上 肇
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2019 年 47 巻 3 号 p. 105-114

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抄録

(序論) 培養表皮の色調を任意に調節する方法,技術について基礎検討を行った。
(方法) ヒト正常色素細胞,ならびに表皮細胞培養中にEndothelin-1(ET-1),ProstaglandinF2α(PGF2α)を添加し,DOPA染色による細胞の着色の変化およびTyrosinase活性を測定し,色素細胞特有の遺伝子発現をReal-time PCRで測定した。正常皮膚を酵素処理し得られた細胞浮遊液から,色素細胞の単離培養法の検討と,培養表皮の作製を行った。色素細胞の単離は試薬を用い表皮細胞と線維芽細胞を除去する方法,F12改変培地で選択的に色素細胞を培養する方法とで検討した。また表皮細胞と色素細胞とを共培養し,色調調整した培養表皮シートを作製した。
(結果) ヒト正常色素細胞にET-1,PGF2αを添加すると,細胞レベルで着色が亢進した。ET-1はTYR遺伝子発現を増加させ,PGF2αは抑制させた。ET-1,PGF2αを添加した培養表皮シートではTyrosinase活性の増強は認めたが色素細胞数に有意な差を認めなかった。F12改変培地を用いて選択的に色素細胞を培養できた。培養表皮の継代時に単離した色素細胞を加え培養を継続したところ,色調調整した培養表皮シートが作製できた。
(考察) 色調調節可能な培養表皮シートの実現は,採皮部位の制限を無くし,採皮面積を小さくし,よりカラーマッチのすぐれた治療を提供できる可能性がある。
(結語) 正常皮膚から色素細胞を単離培養し,さらに表皮細胞と共培養する技術を確立した。色素合成促進剤を組み合わせ,自在に色調を調節できる可能性が示唆された。

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© 2019 聖マリアンナ医科大学医学会
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