聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
問診により早期に診断し得た,月経関連Toxic Shock Syndromeの1例
菱田 吉明土田 知也西迫 尚家 研也佐治 淳子田中 拓奥瀬 千晃松田 隆秀田中 逸
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2019 年 47 巻 3 号 p. 153-160

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抄録

44歳女性。2日間継続する発熱を主訴に近医受診し,尿路感染症の疑いで抗菌薬を投与されたが改善なく,翌日に全身筋肉痛と下痢を伴う40度の発熱とショックバイタルを呈し当院紹介となった。身体所見では結膜充血と顔面・四肢体幹にびまん性紅斑を認め,血液検査ではWBC 17,700 /μL,CRP 34 mg/dlと高度の炎症反応を認めた。身体所見及び,頸部〜骨盤部造影CTでは熱源となり得る有意な所見は指摘できなかった。月経期間中であったことや,以前からの生理用タンポンの使用歴からToxic shock syndrome (TSS) を疑い,多剤抗菌薬併用療法に加え,大量補液,昇圧薬による加療を開始した。血液培養は陰性であったが,腟細菌培養でmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA) が検出された。他の所見に加えて,第7病日には両手足の皮膚落屑を確認でき,TSSの診断を確定した。黄色ブドウ球菌が産生する毒素により引き起こされるTSSは敗血症性ショックを呈する疾患の中でも多臓器不全をきたし致死的となる可能性が高いが,疾患を想定した病歴聴取がなされなければ診断が困難な場合がある。近年日本でも生理用タンポンの使用率は増加傾向にあることより,月経関連TSSはさらに重要性が増すことが予想される。

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© 2019 聖マリアンナ医科大学医学会
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