2023 年 50 巻 4 号 p. 139-149
【目的】平均寿命の延長により高齢者が増加しており,高齢者の透析導入も増加している。保険診療の面から血液透析診療の近年の動向を調査した。
【方法】厚生労働省公表の「NDBオープンデータ」(2014年度から2020年度)と「社会医療診療行為別統計」(2016年から2021年)を参照し,「人工腎臓」の算定回数と点数の年次変化を性別,年齢階級別,入院・入院外別に検討した。
【結果】算定回数は毎年増加し,2020年度は47,516,874回となり,6年間で9.6%増加していた。算定点数は2019年度まで増加していたが,2020年度は減少していた。概算医療費に占める人工腎臓の算定点数の割合は,2019年度まで年々増加していたが,2020年度は2.36%と減少していた。外来の算定回数は,入院の8.4から9.8倍多く,男性は女性の1.7から1.9倍で,男性の割合が年々増加していた。最頻年齢階級は2014年度は60歳代後半であったが,徐々に70歳代前半に移動しており高齢化傾向が見られた。2019年6月期の算定点数は増加傾向であったが,2020年6月期は前年比6%減であった。しかし2021年6月期は0.4%増加していた。
【結論】人工腎臓算定回数と点数は2019年までは増加していたが,2020年6月期は減少しており,2020年度診療報酬改定での減点とCOVID-19感染症流行の影響を受けていたと考えられた。