日本口腔科学会雑誌
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ラット舌下腺腺房細胞の分化に及ぼす副交感神経切除の影響
長門 俊一永木 正実谷岡 博昭
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1990 年 39 巻 4 号 p. 880-889

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抄録

ラット舌下腺腺房細胞の分化に及ぼす副交感神経切除の影響を光顕ならびに透過電顕下に検索した。副交感神経の切除は, 生後24時間ならびに生後48時間に, 左側の鼓索神経を舌神経とともに外科的に切除することにより行い, 舌下腺の摘出は生後5週に行った。生後24時間で鼓索神経を切除した10匹のラットのうち3匹のラットの舌下腺に漿液性細胞からなる特異な終末部が認められた。変化の顕著な腺の一部の小葉では, そのほとんどが純漿液性終末部および多数の漿液性細胞と少数の粘液性細胞からなる混合性終末部により占められていた。非手術側の腺には全く変化が認められず, 対照群のラットの舌下腺と同様の所見を示した。生後48時間での副交感神経切除は, 腺重量の減少を除いて大きな変化を示さなかった。特異な終末部を構成する漿液性細胞は, 分泌顆粒や細胞内小器官など, いくつかの点で正常ラット舌下腺にみられる漿液性半月細胞とよく似た所見を呈していた。しかしながら, これらの細胞はすべて腺腔に直接面しており, 半月を形成するものはみられなかった。以上の所見から, 副交感神経がラット舌下腺腺房細胞の分化に関与すること, 関与の時期は生後48時間以前に限定されることが強く示唆された。

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