2005 年 20 巻 4 号 p. 380-386
浸潤性膵管癌は, 膵頭部に発生することが多く, 増殖進展過程で主膵管を巻き込みながら発育していることが多い. 今回我々は, 主膵管に閉塞がなく, 胆管浸潤がみられた浸潤性膵管癌を経験したので報告する. 症例は65歳, 男性. 食欲低下と嘔気, 黄疸があり, MRCPで総胆管に拡張はみられたが, 主膵管に異常はなかった. 以上より, 下部胆管癌疑いにて膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘍の主座は膵頭部に存在し, 組織型は中分化型管状腺癌であった. 腫瘍による主膵管への浸潤はなかったが, 膵内胆管に浸潤がみられた. Ki-67 Labeling Indexと膵管内癌成分, 癌抑制遺伝子p 53 Labeling Indexは低値であった. よって, 今回我々が経験した主膵管を閉塞していない浸潤性膵管癌は, 緩徐な発育形態を呈し, 悪性度が低いと考えられた.