膵臓
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症例報告
十二指腸潰瘍を契機に発症した膵動静脈奇形の1例
川井田 博充板倉 淳藤井 秀樹佐藤 公本杉 卯太郎荒木 拓次荒木 力
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2009 年 24 巻 2 号 p. 170-175

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抄録

症例は66歳,男性.上腹部痛,タール便を主訴に入院となった.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球後部に出血を伴う潰瘍を認め,クリッピングによる止血術を施行した.腹部超音波検査にて膵頭部に低エコー域を認め,カラードップラーエコーにて低吸収域内にモザイクサインがみられた.腹部CT検査では膵頭部に低吸収域と高吸収域の混在する不整形な腫瘤像を認め,腹部血管造影検査では網目状の血管網がみられた.膵動静脈奇形と診断,再び上腹部不快感とタール便を認めた為,緊急手術を行った.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行,術後経過は良好であった.病理検査では膵頭部に拡張し蛇行した大小の動静脈を多数認め,十二指腸壁を破壊し潰瘍底に達していた.十二指腸潰瘍を契機に発症した膵動静脈奇形は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2009 日本膵臓学会
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