抄録
膵疾患の病態解明には膵機能とその調節機構の理解が重要である.膵外分泌は神経と消化管ホルモン(セクレチン,コレシストキニン(CCK))により制御される.胃酸はセクレチン遊離の生理的因子であり,膵切除術に伴う胃・十二指腸切除はセクレチン動態にも影響を及ぼす.防御因子系抗潰瘍薬にセクレチン遊離作用を発見し薬理作用の一端を解明した.空腸への成分栄養剤投与によるセクレチンとCCKの血中動態,膵液分泌に対する影響を検討し,経腸栄養が膵刺激性の少ない安全で生理的な栄養管理であることを証明し急性膵炎での臨床応用を進めた.膵島インスリンが膵液分泌を促進させ,慢性膵炎モデルでインスリン抵抗改善薬が膵外分泌機能を回復させたことから膵内外分泌相関の意義を証明した.膵機能研究から得られた知見から,膵疾患の病態解明,治療法の提案や開発にヒントとアイデアが提供された.近い将来,未知の膵機能が膵臓病克服に繋がることを期待したい.