2010 年 25 巻 1 号 p. 73-79
症例は49歳女性.人間ドックで施行した腹部超音波検査で,膵頭部に17mmの嚢胞性腫瘤を認め,精査・加療目的で入院となった.腹部造影CTでは膵頭部に辺縁に造影効果を有する低吸収性の腫瘍を認め,MRIで嚢胞性腫瘍と診断した.ERCPで嚢胞と膵管の交通はなく,膵液細胞診はClass IIIであった.経過観察することも選択肢の一つと考えたが,最終的に内分泌腫瘍などの前癌病変を含めた悪性腫瘍の可能性も否定出来ないことを説明し,本人の希望により幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では,膵頭上部に厚い線維性被膜に囲まれた血性の内溶液を有する2cm弱の嚢胞性腫瘍を認め,病理診断は非機能性高分化型の内分泌腫瘍であった.2cm未満の比較的小さな無症状の嚢胞性膵腫瘍は経過観察可能な場合もあるが,本症例のごとく,悪性率の高い非機能性膵内分泌腫瘍などの可能性も念頭におき治療方針を決定する必要がある.