抄録
症例は80歳,女性.無症候性の原発性胆汁性肝硬変(PBC)にて通院中であった.CA19-9の上昇を認め,腹部CTにて膵頭部に腫瘤性病変を認めたため入院となった.諸検査にて門脈浸潤と胆管周囲リンパ節転移を伴う局所進行膵癌と診断し,S-1 100mg/日の投与を開始したが,4週間投与したところでGrade 2の食欲不振が出現したため中止した.画像上,病変が2群リンパ節までにとどまっていたため,S-1 50mg/日を放射線照射日のみ内服,放射線治療は1回1.8Gy,28回照射,計50.4Gyとして化学放射線療法を行った.終了後原発巣の縮小を認め,その後もS-1内服を50mg/日で継続していたが,治療開始の約半年後より急速に貧血が進行した.S-1を中止し骨髄穿刺を行ったところ,骨髄異形成症候群(MDS)と診断され,S-1および放射線治療に伴う治療関連MDSの可能性が考えられた.