抄録
Insulin-like growth factor-1 receptor(IGF-1R)を介したシグナル伝達機構は,膵癌を含め多くの癌で増殖に関与することが報告されている.本研究では,種々の膵癌細胞に対する抗IGF-1Rモノクローナル抗体・R1507の効果を,単剤及びGemcitabine: GEM,5-FUとの併用で比較検討し,更にin vivo腹膜播種モデルにおいて,播種抑制効果を検討した.すべての細胞で適度にIGF-1Rが発現していた.単剤でもGEM及び5-FUと同等の播種抑制効果が見られ,R1507とGEM,5-FU各抗癌剤との併用では優れた相加効果が見られた.また,R1507は腹膜播種モデルに対して有意な生存延長効果を示した.今回の結果は,R1507が単剤あるいはGEMとの併用どちらでもヒト膵癌細胞に対し抗腫瘍効果を認め,有効な抗癌剤となりうることを示唆するものである.