症例は42歳,男性.USで主膵管拡張を指摘され当科に入院となった.MRCP上,膵体部で主膵管が狭窄し,尾側膵管は径10mmと拡張が認められた.US,MDCT,EUSでは明らかな腫瘍は指摘できなかった.ERPでは膵体部に限局した3mm長の全周性の強い狭窄を認めた.膵液細胞診は陰性であり,原因として膵管炎などを考えたが,癌の可能性を否定できず膵中央切除術を施行した.病理組織では狭窄部周囲に高度の線維化があり,その内部に狭窄膵管に接して索状配列をとる小胞巣と豊富な線維増生からなる5mm大の結節が認められた.免疫染色ではchromogranin A,serotoninが陽性を示し,膵神経内分泌腫瘍と診断した.腫瘍径20mm以下で主膵管狭窄を来した膵神経内分泌腫瘍の本邦報告例は,検索しえた限り14例と極めて稀であり,膵管狭窄にはserotoninによる線維化の関与が推察された.