抄録
我々が経験した膵上皮内癌14例中3例において,上皮内癌周囲あるいは隣接して,高度な膵実質の脂肪化を病理組織学的に認め,この所見に相当する画像所見をCTにて確認したので報告する.いずれの上皮内癌も膵体部に存在し,1例では癌は広範囲に広がり,他の2例では分枝から主膵管に進展するものの比較的限局していた.CTでは,広範囲に上皮内癌を認めた1例において膵癌の広がりに準じるように膵体部の広範囲な脂肪化を,他の2例では膵実質の限局した脂肪化の所見を認めた.上皮内癌と膵実質の脂肪化との関連は明らかではないが,細胞内転写因子であるPPARγの活性化を推察した.今回経験した3例は,CTにおける膵体部の限局性の脂肪化所見が,膵上皮内癌の指標になる可能性を示唆している.