2016 年 31 巻 4 号 p. 646-653
症例は59歳女性.体重減少を主訴に近医受診.膵体部腫瘍を指摘され,手術を勧められたが拒否.9か月後に心窩部違和感を認め再び近医受診.膵体部腫瘍の増大を指摘され手術目的に当科紹介.腹部CTにて,膵体尾部に隔壁構造を有する嚢胞性部分と充実性部分を伴う直径13cm大の腫瘍を認めた.粘液性嚢胞腫瘍を疑い膵体尾部切除術を施行した.切除標本では嚢胞性部分と充実性部分が混在し,嚢胞内は凝血塊が充満し充実性部分は白色調の腫瘍であった.病理組織学的検査では,紡錘細胞型と破骨細胞様巨細胞型が混在した退形成性膵管癌と診断された.その後再発巣に対して2回の手術を実施し,初回手術より約20か月間の予後を得ることができた.退形成性膵管癌は予後不良な稀な疾患であるが,3度の手術を行った紡錘細胞型と破骨細胞様巨細胞型が混在した退形成性膵管癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.